第14話 二つの人格の陵とメルの秘密
紗良になる前に、二人の双子でシンクロする状況を切ってしまえば陵と紗良が個別の人間になる。そして俺は陵の体で鏡の世界を脱出し、紗良とは双子ではなく、ただの姉と弟になれると踏んで、女神にお願いした。
意識を取り戻すと、何やら声が聞こえてきた。
「男に戻ったのか、ひやひやしたよ。このまま、何も出来ずに動けなかったら、どうしようかと思ったぜ。」
(ぜ~?俺はそんな喋り方じゃないぞ?それに勝手に喋るなよ。)
俺は慌てて目を覚ますと、目の前には
「えっ?どうして俺がいるの?それにこの感触は…。」
俺は鏡の館の鏡に全身を映すと、そこに映っていたのは…、ベビーフェイスのその顔と女性っぽい体型に透明感のある声は、どっから見ても、紗良なのだが…。
何かを察したのか、もう一人の俺が近付いてきた。するとニヤついて、
「お前、俺を消そうとしたな…。危なかったよ。」奴の顔付きが変わった。
(ゲス野郎か?なんでいるんだよ…。)
「その表情、もしかして、宛が外れたみたいだな…。知らないのか?お前の中に俺がいて一緒に戻っちまったんだよ。一つの体だった時は主導権も無くて、動かせもしなかったが、二人になっちまえば、この通り、俺は俺だよ。」
奴はそう言ったのだが、
「いいじゃねぇか、お前のその体はバケモノ並みに動けるんだから、普通の俺の体より当たりを引いたんだからよ。」
身体能力が高い紗良の体を当たりだと言い出した。
「俺の体を返して貰えないか?俺の中には、お前みたいな怪物が潜んでいたのは分かったけど、主体の人格は俺のはずだぞ?」
体を返して大人しくして欲しいと話すと、
「俺もあの時に戻されちまって、家族全員を折角、俺の女にしてやったのに…、まあ、次は上手くやるよ。邪魔するなよ?」
クズ野郎はまた、同じ事をすると宣言したため、
「何度、戻っても一緒って事か…、陵か紗良のどちらかはどうしようもない、クズになる。家族に何かをするなら、俺はお前を今すぐ…殺す。」
身体能力ではこちらが上のため、攻撃を加えようとすると、
「お前は良いよな~、俺より強い当たりの体を引いたんだから…、俺がお前なら、すぐに殺しているのに、つくづく甘いな。まあ、家族には同じ事をしないし、お互い仲良くやろうぜ、紗良姉。」
握手を求めて来たので、拒否すると、
「そっか~、残念だよ…、お姉ちゃん…サヨウナラ。」
奴はメルが持っていた、時を戻す砂時計を地面に叩きつけて壊した。その瞬間に空間が変化し始めて、俺だけが空間に飲み込まれそうになってなると、いつの間にか目を覚ましたメルが紗良の体の俺の所に手を伸ばして、飛び込んできて、
「陵くん!何をしたの!」陵を問い詰めると、
「何って、この世界に居てはダメな奴を排除するだけだよ?そこの紗良やメル!お前をな。」
奴はこの世界の住人以外を排除すると宣言した。
「メルは陵くんを助けたかっただけだよ。だって…、そのままじゃあ、陵くんは…。」
彼女は何かを言おうとしたが、紗良の俺とメルはその言葉を聞く前に、空間へ飲み込まれてしまった。
俺たちが飲み込まれた先は違う世界線の俺の家だった。隣でメルが泣いていたので、
「メル、やっぱりお前は、違う世界の人間だったんだな…。」
異世界から来た、女の子。
「陵くん、残念だけど…、あの陵くんはもう死んで居なくなったはずだよ。」
あのゲス野郎は死んだと話してくれた。
「俺に何があるんだよ、メル。」死ぬ理由を聞くと、
「数時間の誤差であの陵くんは死ぬ。今の紗良ちゃんと陵くんは鏡の存在。どっちも同じ時間軸に生存していないと影の存在を失い…、死ぬ。」
反面世界の紗良の存在が陵だからだ…そうだ。
「あの
陵が死んだなら、俺が生きている事がおかしいと話すと、
「紗良ちゃんが現存していて、陵くんも存在しているからだと思う。」
彼女はどちらも生存している時間軸だから、生きている事を話した。
(あれ?じゃあ…、今の俺は何者なの?陵としてずっと生きてきたんだけど。)
分からない事が多すぎて、悩んでいたら、
「時がリセットされた。また、あの日に戻ったの、この世界の紗良がまた、死んじゃう。お願い!陵くん。紗良を助けて…。」
メルが泣き崩れてしまったので、俺は
「俺をいろんな世界に連れて行ったのは、運命を変えて、死を回避するためだったんだね。なら、すべてが砂時計が壊れてすべてが元に戻ったとしたら…。」
(俺が彼女の代わりに事故に遭えばいいんだ。)
「事故に遭うのは今日の何時なの?」
日付を確認すると確かにあの日だった。メルに場所を聞くと急いで向かった。そこで紗良を見つけて、
「紗良!」女子高校生の紗良を見つけて叫んで、
「へっ、私?」
自分に似た、存在を見て驚く彼女にトラックが突っ込んで来たので、高い身体能力を活かして彼女を抱き締めたあと、トラックに思いっきり跳ねられた。
俺と彼女は数十メートル飛ばされたあと、意識が飛びそうになるのを耐えて庇いながら、川に落ちた。
「痛すぎだろ!ちゃんと前見て運転しろ!」
川に飛んだお陰で本物の紗良は無傷で助かった。紗良はショックで気を失ったらしい…。
(なんとか、死の回避は出来たみたいだな…。)
そして川岸に上がった所で俺は何故か、気が遠くなり、気を失った。
俺は自分の反転世界の分身に当たる、紗良の命を救う事で今の俺の命を救うと言うことを知り、紗良の交通事故を代わりに受ける事で彼女の命を助けた。
すぐに目を覚ました俺は近くに紗良がいない事に気が付いた。川に落ちたので服はビショビショだし最悪だと思っていると、なぜか、まったく濡れておらず、着ている服も本物の紗良が着ていた、女子高校生の服だと分かった。
「この世界の紗良ちゃんになったのか…。するともう一人の紗良は…。」
周りを見渡しても、いないため、事故現場に戻り、
「あんた…、大丈夫か?」
事故を見ていた会社員の男性に声を掛けられたので、
「大丈夫です。すみませんが、警察に連絡をお願いします。」
警察への連絡は彼に任せて、落ちていたカバンの中からスマホを取り出し、メルに電話をした。
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