第13話 ゲス野郎の俺に支配された世界

首なしの怪物が出る峠でその怪物と対峙して倒した私たち、


「しかし、なんでこんなのがいるのかな。」

 絶命した怪物を見ながら、どうしてこんな事が頻発するのかを考えていた。


「なんでもいいよ、それより落ちているアレを拾いに行こうよ、巨乳になりたい子とか、男性のアレを取り付けたい女の子とかに売れるはずだよ。」


 メルはいつもどおり、ヤバい発言をし出した。


(性的なアレを売る専門店でも作るつもりなのかな?)


「残念だけど、怪物が死んだから、消滅しているはずだよ?」

 怪物のコレクションのアレは消滅、もしくは腐ってる事を話すと、


「そんな~、じゃあコレだけしか手に入れて無いじゃん。」

 スカートを捲りあげて、女性の下着の中で盛り上がるアレを指した。


(なんて物を取り付けてんのよ!恥ずかしくないのかな。)


 私はメルの下着をずらして、アレを掴んでもぎ取ろうとしたが、完全にくっついて取れない。


「止めてよ~、紗良ちゃん。立っちゃうよ~。」

 私が触り倒したため、ギンギンに立ってしまった。


「神様!いるんでしょ?早く出てきてよ!」

 そう言って、神様を呼びつけると、例の女神様が出てきて、


「うるさいわ!我にも出るタイミングがあるのじゃ。盗まれた神具がまた、悪用されたな。」

 怪物に刺さった剣を引っこ抜くと、メルのアレを見て、


「それも没収じゃ。勝手に人の性器を付けるな。愚か者が!」

 女神が剣を持つと、メルに付いたアレを切り取り、体が元の形に戻った。


「ああ、新感覚だったのに~。」メルはその場に倒れて悔しそうだった。


(色々とヤバいよね、この子。)


「あっ、女神様!もう一人の私と感覚や行動を同調させないで下さいよ!陵と紗良は別の人間なんですから!」

 私は、彼女にシンクロ率が100%になる現象を止めて欲しいと言うと、


「ん?おお、確か、存在する世界が違うのにまだ細く繋がっておるわ。待っておれ、切ってやる。」

 女神が剣を振りかざそうとしたが、私は気付いた、


「待って!今、切ったら、陵に戻れなくなる!」

 そう言って止めさせようとしたが、


「一度放った言葉を取り消すな!貴様は神を愚弄する気か!」

 女神は問答無用に切ってしまった。


(あ~!切っちゃったよ!どうするのよ!)


「よし、終わったな、では帰れ。」

 用が済んだ女神は私とメルを元の世界に戻してしまった。



 気付いた時には陵とのシンクロも切れていたため、急いで電話を掛けたのだが、繋がらない。隣のメルに聞くと、


「陵くんなら、今の時間はお母様とベッドで楽しんでいるはずだし、双子の姉だからって、電話したらダメだよ。」

 メルはアクビをしながら、答えてくれたが、


(お母さんと楽しんでいる?って何?)


 シンクロしなくなったため、私は紗良、もう一人の私は陵と認識されていた。メルを急かして家に帰ると、急いで、レイアさんの部屋に行くと、


「ん、どうしたの?紗良、今日は我慢しなよ、今は妹たちの時間なんだからさ~。」

 陵が小学生の有紗と中学生の紗奈を裸にして抱いていた。


(うわ~、本当にゲス野郎になってるよ~。)


私が唖然としていると、レイアさんに捕まえられて、


「紗良ちゃん、人の時間を邪魔しちゃダメでしょ!」

 行為中の妨害をしたと言う理由で怒られてしまった。


 完全に紗良になった私は部屋に戻り、着替えて降りるとお父さんがいない事に気が付いた。お母さんに行方を聞くと、


「私には陵がいるから、離婚しちゃったって言ったわよね?何を今さら聞いてくるのよ。あなたも邪魔だから、いつでも出ていって良いのよ?」

 実の息子と関係を持った母親に取って、娘の私は邪魔な存在らしい。


 陵の長男、美少年の勇がリビングに降りてきたが、女の子の服を着ていたため、理由を尋ねると、


「紗良お姉ちゃん!お父さんがこのままじゃあHが出来ないから、女の子になって来いって言われたし、手術したって前に話したよね?」


 どうやら、あのゲス野郎は実の息子に性転換手術をさせて女の子にしてしまったらしい。


「でもね、先生が大人になるまで、Hはダメだって…。だから、今のうちに綺麗になって、お父さんに愛して貰うんだ~。」

 エロ教育を受けた勇はメス堕ちしていた。


 繋がっていたモノを切ったため、シンクロしなくなったが、あそこまで世界が変わるとは思わなかったし、メルはよりヤバい陵の方が好きだし、レイアさんも母さんも認めているから、私一人が反対しても、家を追い出されるだけだよね。


「体を取り戻さないとダメな気もするけど、今は誰からも嫌われてない体だから、心地悪い事も無いんだよね…。」

 しばらくこの状態で様子を見ることにした。



夜に紗良の部屋が自分の部屋になったため、一人寝ていると、


「紗良ちゃん、紗良ちゃん。」

 私を呼ぶ声がするので起きると、メルが部屋に入ってきて、


「なんか、帰って来てから、おかしいよ。みんな。」

 陵のハーレム天国を見て、違和感を覚えたみたいだ。


(さすがにここまで世界がズレて変わると帰ってきたばかりのメルも不振に思うんだね…。)


「ワクワクが足りないんだ。それに、あんなの陵くんじゃない。」

 メルは程よく制御出来るゲス野郎の陵が好きらしい。


「じゃあ、どうするの?」

 私は陵を戻す方法を尋ねると、彼女がリュックを持ってきて、中から砂時計を取り出した。


「これをひっくり返すと、運命の分岐点に戻るらしいよ。そこの選択を変えると、私の理想の陵くんが戻って来るはずなの。だから…、紗良ちゃん、陵くんを取り戻して…。」

 彼女に砂時計を手渡された。


「うん、任せて。」私は受け取った砂時計を逆さに向けてあの頃へと念じた。



 私が目を覚ますと、メルが抱き付いていて、


「メルはこの陵くんと一緒に過ごしたい。だって、可愛いもん。」

 砂時計で戻った時は、姉の紗良が誕生したセリフを言い放った所だった。


(一度、放った言葉はこの女神には取り消せない…なら。)


「メルの言うとおりで良いけど、元の世界では、二つの同異体があるとシンクロするから、私たちがこころ個々で独立した人間になるようにして欲しい。」


 そう告げて、陵と紗良のシンクロをこの時点で切って、二人が別の人間になるようにお願いした。


「何じゃ、やけに細かい要求じゃの~、仕方無い、約束じゃからな、お主たちの願いを叶えよう。」


 女神に怒られて、あの時のように、私もメルも気を失ってしまった。


(これで私は私になって戻るから、起きたら陵のはずだよ。)

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