第12話 怪物は自分に合う頭を探している

 首なしデュラハンみたいなヤツが自分に合う頭を探しているらしくてたくさんの人が被害に遭っているらしい…。


「メルさん、私たちはなんのため、会いに行くのかな?」

 目的を聞いてみると、


「ミステリーハンターだよ?ウワサがある所にメルたちがいるんだよ?」

 説得力はあるが、スリルしか求めて無いよね?


 女子同士の他愛もない会話をしていたのだが、急に女性を押し倒したい気持ちになって、隣にいた彼女に、


「メル、ごめん。」


 彼女にキスをして火照る気持ちを抑える事にした。そのあとも止まらないため、近くの草むらに行って下着を脱ぎ、火照る体を必死で耐えながら、トイレをこなすとようやくスッキリして、動けるようになった。


俺はすぐに姉に電話をして、

「紗良!キスをするのは良いけど、勢いのまま、人の体で勝手に自慰行為しないでよ!トイレもしちゃうし、連絡してよ!」


 交換した俺の体でレイアさんとキスをして、そのあとトイレに駆け込み、異性の性器を触り倒した姉に電話越しでキレると、


「ごめん、ごめん。レイアさんが迫ってきて、我慢出来なかったの。」

 あんまり悪びれていない姉に俺は、


「もう、怒ったよ!ノーパンで歩いてやる!道で漏らしてやる!」

 姉の体で醜態を晒してやると脅すと、


「好きにすれば?した所で恥ずかしいのは、あなたじゃない。露出狂の変態の紗良として一生過ごしなさい。」

 そう言うと、俺の体の姉は強制で電話を切った。


(紗良と俺は鏡だから、性的な行動が真逆だ。いつまで経っても、経験しない童貞の俺と昼間から平然とトイレに籠って自慰行為をしたり、俺の体でレイアさんと性的な関係を持っている。すべてが逆で、外見ゲス野郎の俺と内面ゲス女の紗良。)


 つまり、俺の体にいる姉が外も内も最低のゲス野郎になる。陵の鏡、紗良はメルを越えるヤバい女なのだ。


 結局、女性の体で野外の自慰行為感覚を体感し、トイレを済ませたため、体をキレイに拭いたあと、替えの下着を用意していたが、すぐに濡らされると思い、穿かずにメルの所に帰ると、


「こっちの陵くんが好きかも。」メルが抱き付いて来たので、


「止めて、触らないで、紗良がさらに過激な行動を取るから!」

 こっちの興奮した感覚が向こうに伝わる事を恐れると、


「あっちも楽しんでいるんだから、私たちも楽しもうよ、紗良ちゃん。」

 俺を紗良と呼んで来て、目がマジになっていたので逃げた。


 紗良が誕生した時点で体が陵だろうが、紗良だろうが、関係なく平穏な日々は失われてしまった。あのクソ女神に今度会ったら、姉とのシンクロする体を切ってもらわないと、俺の人生はあの中身がゲスの姉にコントロールされてしまう。



 ヤバいな、レイアさんは俺の体を使う姉の方が好きみたいだし、俺の居場所が徐々に奪われて行ってる。俺は仲良くしたいのだが、同じ場所に二人が存在するのはどうやら無理みたい。


「紗良は分かってるよ。どっちかしか生き残れないって。」

 

 首なしの怪物が出る峠に着いた私は、またここが世界の境界線だと分かった。理由は簡単だ。陵だった意識が完全な私になり、紗良とのシンクロが切れたから…。完全な一人の女になった私は重くなったリュックを下ろして、関連グッズを探していると、


「紗良ちゃん!見つけたよ、さあ、楽しもうよ。」メルが迫って来たので、


「メルは私と一緒だね、私は陵の代わりで、メルはレイアさんの代わり。やっぱり、一人の男には一人の女しか側に居られないんだよ。」

 陵の奥さんになれない不憫な幼馴染みに言うと、


「大丈夫だよ。メルは紗良ちゃんの一番になるから、見てよ。」

 メルは手に持っている、男性のアレを私に見せてきた。


「何それ?そんなグロテスクな物を取って来ないでよ。」

 女の私は他人の男性のアレが気持ち悪かった。


「あっちにいっぱい落ちてたよ?それを付けてよ、男と女で楽しもう?」

 メルは女の姉の体に付けろと言ってきたので、


「自分で付けるから貸してよ。」私は男性のアレを受け取って、


「こんなもん、いるかぁー!」

 分離しても生暖かくて気持ち悪いアレを山の方へ全力で放り投げてやった。


「あっ、紗良ちゃん!折角、一番大きいのを取ってきたのに…。」

 彼女はとても残念そうな感じで話して来たので、


「変なもん拾って来ないでよ!いっぱい落ちてる峠って何?」

 男性のアレがたくさん落ちてる時点で怖すぎるよ!


「女性の胸やアレも落ちてたよ?頭は全部、無かったけど、色々と取り付けて、体のファッションショーでもやりたいのかな?」

 どうやら、この世界では、頭狩りが流行っているらしい…。



「良い顔を見つけた…。」

 重苦しい声と共に、大きな体と剣を持った怪物が歩いてきた。


「紗良ちゃん、これを。」メルがリュックから鉄鞭を渡してきた。


(なんで毎回、私の武器が違うのだろう?あの鉄扇は強力だったのに。)


 メルはいつもどおりの手袋を身に付けて、大きな体のわりに俊敏に動く怪物の剣を手袋で弾いて戦っていた。


(つよ!違う世界に入ると、メルの強さが際立つよね。)


 鞭を持たされた理由を考えていた。メルの打撃は強力だけど、あの体には通らないし、腕に鞭を絡ませた所でそれを持っている女性の力しかない私が飛ばされちゃうよ。なら、


「メル!タイミングを合わせてね!」


 メルに呼び掛けて、怪物の振りかざした後の剣の持ち手に鞭を巻き付けて、力を込めて引くと、鞭からネバネバの液が出てきて剣を振り上げた瞬間に怪物の手から剣がスポッと抜けて上空に飛んでいった。


「ナイスだよ!紗良ちゃん。」

 メルは武器を持たない怪物をボコボコに殴り始めた。


「効かぬ、効かぬ。」怪物はびくともしないがメルちゃんは連打を続ける。


「そろそろだよ!メルちゃん!」私は彼女に向かって叫んだ。


 メルが攻撃を止めると、少しだけ距離を取り、怪物を牽制する。


「頭を捻り切ってやる…。」

 そう告げた怪物がメルを掴もうとした瞬間に上空へ飛んでいった剣が落ちてきて、怪物の体に突き刺さり、奴は倒れて動かなくなった。


「怪物さんは頭が無いから考えもしなかったんだよ。ウチの紗良ちゃんは頭が良いんだよ?その剣の重心は体を解体しやすいように先端部分にあるんだよ?そんな片寄った武器が上空を舞うと必ず先端部分を下にして落ちてきて地面に突き刺さるよね?」


 メルは丁寧な説明をしていたが、怪物は絶命しているため聞こえない。


「イェーイ、紗良ちゃん!」

 彼女がいつものハイタッチを求めて来たので、私は…、


「やったね、メル!」ハイタッチで答えて喜んでいた。


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