第11話 双子の姉とは、シンクロ率100%

 女神の力で鏡の外に出られた俺たちは入る時と同様、また気を失ってしまった。


「陵くん!陵くん!起きてよ。」

 どうやら、俺は戻ってきて、メルに呼び掛けられたらしい。


「ああ、すまないな、メル。」俺は起き上がろうとしたら、


「私はメルじゃないよ、紗良さらだよ!」その言葉に俺は飛び起きた。


 そこには俺がミラーワールドの時にいた姿、女性の陵が存在していた。


「紗良ちゃん!なんで陵くんの心配ばかりして、メルは無視するの!」

 メルは俺ばかり心配する紗良(俺の分身?)に怒っていた。


「だって、メルさんが悪いんでしょ!ウチの弟を危険な目に遭わせてばっかり。今日こそは許さない。」

 そう言った、彼女は俺だけを連れて鏡の館を出ていった。


 どうやらまた、家族が増えたらしい…。


 そして、今回も俺しか記憶が無くて、メルが願ったくせに本人は覚えていないし、紗良はメルの事がメチャクチャ嫌いらしい。彼女は俺とすべてが反転している双子の姉。かなりの人気者でしっかり者、親の信頼も厚く、文武両道で優秀、友達も多い。火の打ち所の無い女性なのだが、一個だけ圧倒的な欠点があった。それは、


「お姉ちゃんは幸せだよ。」

 帰りのバスではメルを押し退けて俺の隣に座り、ベタベタ引っ付いてきた。


 完璧な才女の欠点はダメ人間でゲス野郎が好きと言う、困った人間だった。わずか9歳で13歳の外国人少女を妊娠・出産させて、レイアと結婚後にメルと浮気して、妊娠・出産させる姿を見て、弟には私がいないとダメになると言う使命感と恋愛を混同させて、ホレてしまった。


「陵くんは全制覇だね。おめでとう。」

 メルもゲスな陵が好きなので、俺を廻る争奪戦に意欲を出している。


 確かに俺は小学生・中学生・高校生・大学生・社会人の女性と過ごし、双子、幼馴染み、姉、妹、外国人と幅広い女性に手を出したゲス野郎と認定された。


「陵、お腹空いたでしょ?私も空いたもん。私なら陵のすべてを分かってあげられるよ?」


 紗良と俺は隣にいる時の心地よさが全人類の中ではダントツに良い。


(鏡に映る自分だからな…、一緒にいないと不安でいっぱいになる。)


 部屋割りも姉の紗良が加わった事で家の構造が根本的に変わってしまい、

 

 ほんの数週間前までは俺と両親の三人家族だったのだが、今は、

 

俺の両親 共に40代


大学三年のおれ  20歳 長男 弟

同じ三年の紗良さら 20歳 長女 姉

 

高校三年のメル 17歳 幼馴染みの愛人?

 

ルナ 1歳 陵とメルの娘

 

中学二年の紗奈 14歳 次女で陵たちの妹?

 

小学三年の有紗 9歳 三女で陵たちの妹?

 

外国語教師で社会人のレイア 24歳 陵の妻

 

小学四年の勇 10歳 陵とレイアの息子

 

十人家族という凄まじい事になっていた…。


 部屋割りも、俺とレイアの夫婦部屋、紗良と有紗の姉妹部屋、メルとルナ親子に紗奈がいる部屋、勇の部屋など、十人家族の影響で家が拡張されて我が家がかなり大きくなっていた。


 こうして部屋割りをしているのに、ほとんどの人間がそれを無視してくる。特にウチの姉と妹がすぐに俺の隣で寝る。そこにメルたちが来るので大部屋で良いような気もする。


 食卓もやかましいのだが、俺は紗良の前に座って鏡みたいに同じタイミングが食べ始めて、お互いに何も言わないで、好きなおかずを交換したり、食べる量も速度も一緒のため、他に邪魔されると不快感が同調して、二人でキレる。


(う~ん、双子の姉の存在は偉大すぎるな。相手は鏡だからシンクロ率が100%なんだよ。一緒にいるのが普通なんだ。)



「さて、陵くん。今回は首なしの怪物が徘徊している峠があるらしいぞ。」

 メルが髪をセットしている時に話し掛けて来たので、


「メル、すまない。今は動けないから後にしてくれないか?」

 俺が彼女に動けない事を告げると、


「紗良ちゃんには聞いてないよ。私は陵くんと話しているんだ。」

 メルが姉には言っていないと排除しようとしたから、


「メル、今は紗良の体の中にいるんだよ。だから、この体で今日はお前に付き添うんだ。」


 夫婦のデート日とメルのオカルト調査日が重なったため、俺は紗良にメルと調査してくれと頼んだのだが、メルと二人きりは嫌だと断られてしまった。


(苦肉の策がシンクロしている姉との体の交換だった。)


「運動能力をシンクロさせれば、ほぼ変わらないし、メルには迷惑を掛けないよ。」

 紗良の体の俺はそう言っていると、髪の毛のセットが終わり、化粧の時間に入った。


「メルさんが陵の体に乱暴してきたら、私は困るからね。愛する弟の体を手元に置いて置きたいのよ。」

 俺の体の紗良は女言葉を使ったので、


「紗良、レイアさんの前では、ちゃんと男言葉でデートしてね。俺の奥さんなんだから…。」

 そう言って言葉使いを注意すると、「ごめんごめん」と謝られた。


「もう少し掛かるから、あとは歩きながらで構わないか?化粧をする時は表情筋を動かすと紗良に怒られちゃう。」

 そう言って、メルを退けたあと、化粧を完成させてもらった。


 

「それじゃあ、紗良、頼むね?レイアさんとHしても良いけど、こっちの体も火照ってくるから夜までは、絶対にしないでね。さあ、行こう?メル。」


 なんか、不満そうなメルを連れて俺は、出掛けていった。


「陵くんは、それで良いの?その体じゃあ、私を押し倒してレイプ出来ないんだよ?」

 紗良の体の俺に不満そうなメルが言ってきたので、


「仕方ないよ、私だって、レイアさんとのデートをしたいよ?最後はホテルで二人きりで居られるし…。」


 夜は大好きなレイアさんとの童貞卒業を楽しみにしていたが、また、今夜も夜の相手を紗良に取られてしまった。

 

「う~ん、まあ、いっか。Hが目的なら夜に襲えば良いだけだし…。」

 メルはそう言って、切り替えたが…、


(メルに言えないよ…。最近、紗良と夜は入れ替わってるって。悠々自適に姉の体で一人の睡眠を満喫してるって…、言えないよ。)


 紗良は俺の体で妻のレイアさん以外とはHをしない。この間、勝手にされた時は姉の体で気持ち良すぎて、失神した。


(あの女神様…、こんなに全部をシンクロするなら、説明しとけよ!トイレも同時だから、女の体でも、草むらでしなきゃダメな場合もあるんだぞ!)


姉とのシンクロ話はおいといて、

「首なしってデュラハンみたいな奴なの?」


「なんか首を探しているらしくって持っている剣でああでもこうでも無いって言いながら、人の首を跳ねてくるらしいよ?」

 彼女は平然と話したのだが、


(それ、ヤバく無いですか?メルさん?)

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