第8話 ゲスは異世界でも関係を持つ

 俺はメルと山にウォールベアと言うUMAを捕まえに生息している場所に出掛けた。そこでメルといつものようにはぐれて、そのあとに出会った女性とウォールベアを一体なんとか倒したのだが、彼女は変な世界の住人だと分かり、またもや異世界に迷い込んでしまったらしい…。


「リョウ様、あなたはこの町では私の夫と言う事でよろしくお願いします。外部の人間をお城に入れるのは手続きが面倒なので…、演技とはいえ、こんな年増の妻は嫌でしょうが、よろしくお願いいたします。」

 自分の方が年上のため、少し引け目を感じていたので、


「レイアさん。気になさらないでください。俺は少し年上のレイアさんが頼りになるし、年下はもう面倒なので、こんな人が妻だった良いのにって本当に思っています。」


 メルや有紗を見ると年上のレイアさんの方が断然、楽だし、行動もリードしてくれる事はとても助かっていた。


「お止めください、私のような子もいない、生き遅れの女に世辞は要りませんよ。」

 彼女の世界では子のいない24歳は生き遅れ、扱いを受けるらしい。


(時代とか、歴史背景だよね、俺たち日本人の24歳女性のほとんどが未婚で子もいないのに…。)


 お城に入ると彼女に付き添う形で王様に急な知らせとして謁見する事になった。


「事情は分かった、では、新たな勇者の選定だが、そちらの子を勇者にしてはどうかな?そなたの新たな夫はウォールベアを一体退けた強力な魔法が使える術者なのだろ?ヒーラーのそなたとの子なら、良い勇者が誕生するであろう。そうせよ!」

 王様に俺との子供を作れと言われたレイアさんは、


「御意、仰せのままに致します。」そう告げて、王様との謁見を終えた。


(国民は王様に逆らえないんだ…。レイアさん、本気で俺との子供を作るのかな?)


二人とも無言のまま、レイアさんの家に戻ると、

「では、今晩に早速…。」彼女はそれだけ告げて来たので、


「本当に俺で良いんですか?」彼女に尋ねると、


「リョウ様だから、良いんですよ。お任せください。立派な勇者を産んでみせますから…。」

 彼女は顔を真っ赤にして部屋を出ていってしまった。


(あれ?まさかの異世界で童貞を卒業できるの?しかも、相手は金髪ブロンドの外国人風の女性。)


やがて、夜になり、彼女と部屋で二人きりになると、

「年増の裸を見て、幻滅しないでくださいね?」


 彼女は美しい体を俺に擦り寄せて来て、


「まずは口づけをしますね、あとは私にお任せください…。」

 そう言った彼女にキスされた瞬間に世界が暗転し、俺は気を失った。



そして、朝になり…、

「お父さん!お父さん!起きてよ~。」子供の声に起こされた俺は、


「え~と、誰?」

 俺を起こしてきた10歳くらいの美少年に向かって尋ねると、


「あなた、自分の子供に向かって、誰は変ですよ。」

 レイアさんが、俺に向かって自分の子供と言ってきた。


「ええ!なんで、子供、あっという間に10歳くらいに成長しているよ!おかしいよね!昨日に体を重ねただけだよ?」

 そう言って、昨日の出来事を聞くと、


「あなたったら、私と魔力を重ねただけで気絶してしまうんですもの。気を失う量の魔力を注ぎ込んでくれたんですね…。あなたの子供への愛を子宮で感じましたわ…。」

 そう言って、美少年の頭を撫でたあと、


「あなた、この子の名前はなんて言うの?」

 俺が父親だから、名前を付けないといけないらしい…。


(異世界では、性行為では無く、父親の魔力の譲渡で子供を作るのか。俺は魔力が無いから、見た目が、ほぼレイアさんの姿なんだ…。)


まるで美少女のような勇者に名前を付けろと言われたので、

「勇者のユウでどうかな?なんかジェンダーレスにも聞こえるし。」


 俺はほぼレイアさんの姿をしている男の子にユウと名付けた。


その名を聞いたレイアさんは、

「勇者のユウ…、とても素敵な名前ね。ありがとう、あなた。」


 レイアさんは勇の頭を撫でると、勇もありがとうお父さんと言って喜んでくれた。


 そして、勇者の誕生を王様に報告しよう登城したら、城の中がかなりざわついていた。レイアと勇の三人で、王の間に行くと、


「あっ、陵くん!ウォールベアを捕まえようとしたんだけど…、抵抗されて、殴ったら、みんな倒しちゃったよ。」


 メルは山のウォールベアを夜通しですべてブッ倒したらしくて、俺とレイアさんの子供、勇者のユウが活躍する事なく、物事が解決してしまった。


 その後、王様に王国最強の剣を褒美に与えられたメルは、要らないと言い出したため、褒美を断られた事に王様が激怒して、メルはもちろん、知り合いの俺、俺の妻と間違われたレイア、息子の勇は街を追い出されてしまった。


「おい、メル。俺とお前は構わないけど、レイアさん達は街を追い出されると大変だろうが、どうしてくれるんだ!」

 俺は礼を知らないメルを叱ると、


「違いますよ、王国はメル様とあなたの圧倒的な力を恐れて、私たち全員を追い出したんです。」

 力を持つものは必ずこう言う目に遭うものだと話してくれた。


 この言い争いを続けているとまた、


「また、お主らか!変な空間を現世に作るなと言ったであろう。」

 この間の髭お爺ちゃんが怒り狂って俺とメルを睨んできた。


「お爺ちゃん!私たちのUMAの捕獲を邪魔しないでよ!」

 メルは神様っぽい人に逆ギレしたため、俺は慌てて、


「ごめんなさい!多分、今回はこれです。」

 俺はリュックから冒険の書を取り出して、髭の神様に渡すと、


「もう、時空の狭間をこじ開けたりして、関わるなよ。」

 髭の神様はこの間みたいに俺とメルを外へ追い出そうとしたので、


「あっ!待って!このままじゃあ、レイアさん達が巻き込まれるよ!」


 と言った時には時が既に遅く、山の近くのバス停に俺、メル、そして…普通の洋服を着たレイアさんと勇が座っていた。


(ヤっちゃったよ~、また…。)


「今日は楽しかったね、お父さん。」

 外国人の美少年の勇が俺を父親だと言ってきた。


「そうね、私も良い休暇になったわ、ありがとう、メルちゃん。」

 レイアさんは普通の外国人女性となってしまっていた。


「メルも楽しかったよ~、UMAはいなかったけど…。」

 メルの目的は変わらなかったが、今回もすべてを覚えているのは俺だけみたいだ。

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