第7話 彼女はUMAを捕獲したいらしい…
ゲス狩くん…、大学でのアダ名はこう呼ばれている。小学生の妹、中学生の少女と性的な関係を持ち、高校生の少女との間には子供がいる。かなりヤバい男子大学生と言われて、大学にも呼び出しを受けて、厳重注意を受けているくらい話が拡散されていた。
(童貞ってどうやったら分かって貰えるだろうか?)
チェリーな俺の評判はすべてこの幼馴染みが握っていた。
「陵くん、今回は熊より大きい、ウォールベアって言うUMAを捕まえようよ。肉食で、現地の住民や猟師がもう9人食べられてるんだよ!これはメルたちの出番じゃない?」
キチガイの幼馴染みは人食い熊を捕まえると言い出した。
(無理に決まってるだろ!猟銃持ってても倒せない相手だぞ?)
「お兄ちゃんに勝てない相手はこの世にいないからね!そんな熊なんか、パンチで秒殺だよ!」
有紗はとんでも無いことを言ってきた。
「有紗ちゃんは私とお留守番だよ。メルお姉さん達の邪魔しちゃダメだからね。」
紗奈ちゃんはそう言って、有紗を抱えて付いて来る事を阻止した。
(ブーブー言っている有紗が羨ましいよ。俺は強制参加なんだから…。)
今日のメルとのデートは巨大熊を捕まえようらしい…。死が迫っているのにも関わらず、ウォールベアの生態に付いて彼女は話し始めた。
「そもそも、みんなはUMAの事を知らないから、食べられちゃうんだよ!ちゃんと知識を持って対峙したら、楽勝だから。」
メルは何故か自信満々に捕らえられると宣言していた。
「ウォールベアは賢いけど、頭が良い分、本家のヒグマより初速は遅いはずだよ。陵くんはクロサイに勝てる?」
動物の知識を披露してくれるのだが、サッパリ分からない。
「いや、勝てないよ。俺は人間だもん。」俺は弱いと言ったら、
「だよね、だったら、これを貸してあげるよ。」
彼女はいつものリュックの中から、変な水鉄砲を二丁渡して来た。
「水鉄砲?それじゃあ、勝てないよ?」
俺が不審物を見るような目で見ていると、
「混ぜるな危険だからね。ウォールベア以外には使わないでね?」
メルはいつもの不思議な手袋をし始めて、がんばっていっぱい捕ろうねと告げて、楽しそうに山をかけ上がって行った。
(いっぱい捕るって、一体じゃ無いの!しかも、また単独行動なの?)
でも、どうしてこの山からそんな熊が出始めたんだ?熊より大きい熊ってどれくらいの大きさなんだろ?俺はメルが進んで行った方向へ歩き出すと、すぐに、人間の服と骨が落ちていた。
(食べられてる…。無理だよ!死んだよ!)
メルには悪いけど帰ろうと引き返した時に、
「すみません!助けて下さい!」声がしたので振り返ると、
白い服を来た女の人が、寄り掛かってきて、少し先に五メートルぐらいある熊が猛然とこちらに向かって来た。
「いや、無理!デカ過ぎるだろ!」
慌てて彼女の手を引いて、近くにあった人間だけが通れそうな穴に潜り込むと、熊は手だけ突っ込んで来て、俺たちを捕まえようと手をバタバタし出した。
「コイツ、穴をこじ開けるつもりか?」
ご自慢のパワーで天井をブッ壊そうとし始めたので、メルに貰った水鉄砲を構えて、熊の手に掛け始めると、濡れるだけだったのが、
(混ぜると危険って言ってたし、一つを手に染み込ませた。もう片方の液体を掛けると…、何かが起こるはず。)
「ウグォー!」
熊が大声でうなり上げて天井を破壊した。その瞬間にもう片方の液体が入った水鉄砲を放つと、熊の腕が吹き飛んで洞穴が完全に崩壊した。
しばらくして、俺は崩壊した洞穴からボロボロになって飛び出すと、手を握っていた彼女を引き上げて、ようやく二人で脱出した。熊は肩まで部位が破壊されていて、出血多量が原因で死んでいた。
(混ぜるな危険って、液体爆弾かよ!)
「大丈夫?なんで、こんな所にいたの?」女性に理由を聞くと、
「助かりました、仲間が全員殺られてしまって、私は非力なヒーラーなので、腕力がありません…。」
そう告げると、彼女を庇って傷だらけの俺に呪文を唱え始めた。
(なにこれ?なんで俺はいつも、変な世界に巻き込まれるの?)
俺はRPGゲームって事はあれはモンスターって事かと理解したため、彼女にどうすれば良いのかを聞いてみた。
「なんのためにここへ来たの?」と目的を聞くと、
「村を脅かすウォールベアの討伐に来たのですが、伝説の勇者様と聖騎士様、大魔法使い様が殺られてしまって、新人のヒーラーの私だけ残ってしまい、逃げて来た所、魔法使いのあなた様に助けて頂いたのです。」
彼女は涙を流しながら泣いていた。
(勇者様も聖騎士様も、弱すぎるだろ。熊一匹にほぼ全滅だよね!)
この物語もバランスがおかしいのか。むしろ、何故迷い込んでしまったんだ?俺はいつも背負わされているリュックの中を探ると、旅のしおりみたいなのが出てきた。
(冒険の書って何?なんでこんな物が入っているんだよ。)
その書にはメル…レベル17、リョウ…レベル20、って掛かれていた。
(レベル20って何?)
冒険の書を読んでいると、彼女が除き込んで来て、触った瞬間に、
レイア…レベル24って書き足されたため、
「君、レイアって言うの?レベル24の。」彼女に聞くと、
「えっ、なんで私の名前と年齢が分かったんですか!」
彼女は言い当てられて驚いていた。レベルはどうやら年齢の事らしい…。
冒険の書には詳細な事が書かれていないため、悩んでいると、
「一旦、町まで戻りましょう。私も魔力が残り少ないので…。」
彼女はそう言うと、呪文を唱え出して気付いた時には、西洋の町並みっぽい場所に到着した。
「まずは勇者様の死を報告するため、お城に行きたいので、私の家に行って着替えましょう。」
彼女が歩き出したので、付いていくとすぐに彼女の家に着いた。
(結構、良いお家だな、一人で住んでるのかな…。)
「すみません、亡くなった夫の物ですが、お城へは正装でいかないとダメなので、お着替えください。」
取りあえず、従う事にした俺は、中世の正装服に着替えたあと、彼女の着替えを待っていると、ドレスアップした美しい彼女が出てきて、
「では、行きましょうか、リョウ様。」
彼女は微笑みながら、手を握ってきた。
こうして何故か、俺は山で出会った女性とお城に行くことになった。
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