第6話 クリア報酬とゴチャつく家

 メルのせいでまたもや俺は変な世界に迷い混んだ。次はゲームの世界らしいが、死んだら…帰れなさそうなので、クリアすることにした。


「あれが親玉っぽいね。君は見たことある?」

 変な帽子に変なマント、ドクロの像を崇めている奴がゾンビを作り出していた。


「お兄ちゃん、私は早く子供が欲しい。」

 ゲームの設定がバグっている彼女は親玉よりも俺とのハッピーエンドを優先したいらしい。


どうしようかなって思っていたら、正面からメルが乗り込んできた。

「あっ、見つけたよ!やっぱり、VRの映画は面白いよね!ゾンビを殴りまくれる最新の映画はスゴいな~。」


 メルはすべて、VRの映画だと思っていた…。


(バカなのか?映画でゾンビを殴れる訳ないじゃん。専門のメガネも付けてないのに、なんでリアルって気付かないのかな。)


「貴様!あの女じゃ無いのに何をしに来た!」


(親玉はあの女って言っているけど、この少女の事なのかな?でも、この子は目的を忘れてるし、クソゲーになってるけど、クリアが近いから俺もアイツを殴って終わらせよう。)


 奴は前を向いて俺に気付かないため、背後に回り込んで行くと、


「あっ、陵くん!ようやくエンディングなんだね、じゃあ、二人でやろう!」

 

 俺が背後から親玉の股間に杖を振り上げると体制を崩した所にメルは右フックをお見舞いして、一撃で倒れてしまった。


「イエーイ!陵くん、私たち主役映画はこれでエンディングだよ?」

 ハイタッチを要求してきたのでハイタッチすると、


「お兄ちゃん!その女は誰よ!」

 ゲームのバグヒロインがメルに突っかかって来たので、


「あっ、エキストラの女の子?可愛いね。」

 メルは少女を抱え込んで、可愛いと頭を撫でていた。


どうやって帰るのだろうと考えていると、

「主らか!空間を歪めて、世界を作ったのは!」


 誰かにキレられて振り向くと、モジャモジャ髭のお爺ちゃんがものすごい形相で宙に浮いて俺たちを見下ろしていた。


「どちら様ですか?この子に変態教育をした神様?」

 ヒロインが主人公の理想になるように設定した人かと尋ねると、


「お前がそんな鍵を持っているから、世界が出来たんだろう?弟に返しておくから、早く自分の世界に帰れ。」

 神様がリュックからあの世で貰った鍵を取り出すと、帰れ!と言われた。


「お爺ちゃん!エンディングが変だよ!普通は陵くんと私がキスしてエンドロールでしょ?」

 映画の終わり方に不満を言い、俺にキスをして終わろうとしたら、


「お兄ちゃんは私のモノなの!」そう言って、先に俺の唇を奪った。


「どうでもいいから出ていけ!」神様に俺たちは追い出されてしまった。



 気が付くと、俺たちは映画館の席に座っていて、ゾンビ映画のエンドロールが流れていて、隣にいたメルは映画を見て感動していた。


「やっぱり、全員死亡のバットエンドは感動するよ!ね~、陵くん。」

 問題は全員死亡のバットエンドで泣けるヤバい奴よりも、


「え~、ヒロインに襲われて死亡なんて可哀想だよ!ね~、お兄ちゃん!」

 俺の反対側に座る、俺たちのいた映画のヒロインの彼女が座っていた。


(え~、なんでいんの!)


すると、メルが、

「あのさ~、有紗ありさちゃん!陵くんの妹だからって、付き合っているメルたちのデートに付いて来ないでくれないかな?」

 彼女は有紗と言う名前で、俺の妹と言う設定で存在していた。


「お兄ちゃんは私と結婚するの!メルこそ邪魔なの!」

 メルとこの少女がケンカを始めてしまった。


(また、俺の周りの環境が変わってしまった。)


 いがみ合う二人を連れて家に帰ると、紗奈が出迎えてくれてケンカをする二人を止めていた。自分の部屋に戻ると、俺とメルの部屋と有紗と紗奈の部屋に別れていて、部屋は広くなっていたが、女性物の服や小物が増えていた。


「あっ、お姉ちゃんの物を持ってきたから、使ってね。」

 紗奈はいまだに俺を姉だと思い込んでいるのか、亡くなったお姉さんの服などを俺の衣類置き場にしまい込んでいた。


(ハンガーには若い女性が着る服、引き出しには男性物の下着に女性用の下着が混じってる…。俺にいったいどうしろと?)


 メルは俺の隣で寝て来るのはまだ分かる…、でも、有紗と紗奈も俺の隣で眠りたがるから、当然、ケンカになるし、女性の匂いで頭がおかしくなる。


「メルになんか、お兄ちゃんは渡さない!」

 妹になった小学生の有紗はメルに敵意を剥き出し、


「お姉ちゃんは男性になっても、私のお姉ちゃんだもん。」

 そう言って、血の繋がらない、女子中学生に抱き付かれ、


「陵くんはメルの事が好きだから、もう一人子供を作りたいんでしょ?」

 女子高校生のメルはHしようと誘ってくる。


(無理に決まってるだろ!メルを襲うと、有紗と紗奈も絶対に求めて来るよ。それを知ってて、メルは俺をゲス野郎にしたいのか?)


 翌日に大学へ行くと、小学生の妹にまで手を出す最低なゲス野郎と言う属性が加わっていた。


 幼馴染みの高校生を妊娠させて、姉と偽って女子中学生を家に連れ込み、女子小学生の妹にまで手を付ける…。そんな俺に話し掛ける大学生などは存在しないと思っていたが、ある女子大学生に声を掛けられていた。


「あの~、私、猪狩くんが、女の人なら年齢を問わない、ゲス野郎って聞きました。でも、Hが上手いんですよね?」

 とんでもない痴女に声を掛けられてしまった。


「うん、ゲス野郎だから、関わらないで。」

 これ以上は無理だと思い、近寄らないでと言うと、


「悩みを聞いて欲しいんです。彼氏が好きなんですけど、Hの相性が良くなくて…、どうしたら猪狩くんの彼女たちみたいに複数交際されても満足できるようになるのでしょうか?女子の友達に聞いても、解決しなくて…。」

 性生活と交際の悩み相談をされてしまった。


(俺はまだ、誰ともしたこと無い、童貞ですし、相談されても。)


「好きな彼とHを少なめにして、新しくHの相性が良い彼氏を作れば良いんじゃないのかな?」

 シンプルに目的を変えれば良いのでは?と言うと、


「なるほど、猪狩くんは浮気しても、悪びれて無いもんね。私もハッキリ言うよ、彼にHしたくないけど好きって。ありがとう、彼氏に伝えてくるよ!」

 彼女は満面の笑みで手を振って去って行った。


(彼氏にセックス専用の新しい彼氏を作るけど、あなたが好き…って言うつもりなのかな?俺のせいで、一人のゲス女が誕生しそうです。)



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