♯15 盗撮犯「エロ男爵」

「よくナンパされるの?」

「3人でいる時は、そうでもないですけど、一人の時は結構w ねw」


 3人組のリーダー格である武内萌子たけうちもえこちゃんが、伊藤花菜いとうはなちゃんに同意を求めた。


「うんw 麻里子さま程ではないと思いますけどw」


 確かに、今日の僕は早耶ちゃんたちと一緒にいたので、一度もナンパされていなかった。


「麻里子さまも、よくナンパされるでしょ?」


 3人の中で一番大人しい小池詩央里こいけしおりちゃんが、僕に質問をしてきた。


「私は全部無視してるけど」

「あははw 麻里子さまならやりそうw」


 殆どの男子高校生にとって、セックスはエロ動画やマンガの中の出来事だったが、女子高生たちにとってのセックスは身近にある現実リアルだった。


「怖くないの?」

「私たちは薬を飲んでるから、中に出されても平気ですけどw」

「でも、さすがに病気は怖いかなw」


 外見に幼さが残るH高校の3人は、避妊薬を常用しているようだった。


「お金を貰ったりするの?」

「う~ん…自分からは言いませんけど…」

「タクシー代とかは貰ったりしますよw」

「そうなんだ…彼氏とかはいないの?」

「私は、好きな人はいますけど…ねえw」

「高校生は下手だから、痛いだけで気持ち良くないしw」

「すぐ逝くしw」

「さっきの男たちも下手そうだったよねw」


 確かに、セックスには生まれ持ったセンスも必要だが、経験も重要だった。


「そんな事より、早くコスメを見に行きましょ!」

「うん、分かったw」


 僕はメイク道具の殆どを通販で買っていたが、コスメのプロショップも幾つか知っていたので、女子高生たちを引き連れて歩き出した。


「麻里子さま! 手をつないでもいいですか?」

「えっ、いいけどw」


 僕の隣にやって来た瞳美ちゃんが僕に体を密着させてきた。


 瞳美ちゃんにとって僕は、自分を綺麗にしてくれるシンデレラの魔法使いのような存在になっていた…。


「これで、明日から自分でメイクが出来るねw」

「はいw でもメイクで分からないことがあったら、麻里子さまに連絡しますねw」


 生まれて初めて自分専用のメイク道具を買った瞳美ちゃんは、僕に体を密着させて満面の笑みを浮かべていた。


「後ろから見てると、二人は双子みたいですねw」


 身長がほぼ同じ僕と瞳美ちゃんは、双子に見えるようだ。


「双子にしては、麻里子さまの方が大人に見えますけどw」

「そう?」

「麻里子さまって、本当にK女なんですか?」

「何で?」

「なんて言うか…オーラが違うと言うか…」


 萌子ちゃんたちは、僕が普通の女子高生ではないと気付いているようだった。


「よく分かったねw 実は私、男なんだw」

「え〜! またまた~w」

「本当だよw だって、声が男でしょw」

「え〜〜〜!!!」


 僕の男声を聞いた萌子ちゃんたちは、驚きの余り一斉に仰け反った。


 僕は2時間近く一緒に買い物をしていた女子高生に男だと気付かれていなかった。


 どうやら僕は「不気味の谷」から完全に抜け出せたようだ。


「信じられない…」

「こんな綺麗なのに…」

「あっ、だからメイクに詳しいんですね!」


 テレビの影響なのか、僕みたいな男はオネエに分類され、美容に詳しいと思われていた。


「じゃあ、チンコとかも生えてるんですか?」

「勿論w」

「えっ! さっき見た時もぺったんこでしたよ!」


 何度も僕の下着姿を見たことのある早耶ちゃんが、僕に男性器があることを疑っていた。


「女の子モードの時は、平らにしてるからねw」

「どうなってるんですか?!」

「えっ!見たい!見たい!」


 女子たちは僕のスカートの中が気になるようだった。


「どうって、普通だよ…ほらっ」


 僕は周りに人がいないことを確認してから、自分のスカートを捲ると、萌子ちゃんたちは身を屈めて僕の股間を覗き込んだ。


「えっ! ぺったんこだ!」

「ていうか、ちゃんとスジもあるんですけど!」


 僕の履いているTバックのガフパンティは、女性の陰裂まで再現されていたので、立ったり座ったりを繰り返していると、重ね履きしたショーツが割れ目に食い込むこともよくあった。


「えっ! 脱いで見せて下さい!」

「バカw こんな所で見せられないでしょw」


 周囲に人がいない状況とはいえ、公共の場で性器を露出することは法律や条例に抵触する恐れがあった。


 それに、僕は瞳美ちゃんを見て性的に興奮していたので、亀頭がカウパー腺液でヌルヌルに濡れている筈だった…こんな状態を女子高生たちに見せられない…。


「そっかw」

「それに、チンコなんて、みんな似たようなモノだから見ても面白くないよw」


 僕がスカートを元に戻すと、萌子ちゃんたちは僕の股間の高さにあった視線を通常の高さに戻してくれた。


「それにしても、麻里子さまって見せパンを穿いてないんですねw」

「そうそう、早耶ちゃんも瞳美ちゃんも穿いてないから、K女では流行ってるの?」


 意外にもスカートは簡単に捲れる構造ではなかったが、女同士で2時間も一緒にいれば、お互いの下着を目にする機会は多かった。


「別に流行ってないけど、こっちの方が楽だしw」

「でも、それってヤバくない?」

「うん、エロ男爵に盗撮されるかも…」

「えっ!」


「エロ男爵」という言葉を聞いて、僕の隣にいた瞳美ちゃんの表情が強張った。


「エロ男爵」は女子高生の間では有名なようだが、僕はその存在を知らなかった。


「エロ男爵って何?」

「あっ、この盗撮犯のことです!」


 萌子ちゃんがスマホの画面に表示させたのは、エロ動画の販売サイトだった…。

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