♯16 盗撮された僕

 女子高生たちと別れた僕は、自分のマンションに帰っていた。


 シャワーを浴びメイクを落として男の部屋着に着替えた僕は、萌子ちゃんに教えてもらったサイトを確認することにした。


 そのサイトはエロ動画を販売するサイトで、主に個人が撮影した動画が商品となっていた。


 普通の男である僕は、この手の盗撮動画を何度も見たことがあったが、その殆どが何年も前に撮影された、俗に「拾い物」と呼ばれる動画だった。


 女性のファッションには明確な流行があり、それは制服の着こなしにも現れていて、スカートやソックスの長さで、大体の年代が特定できた。


 盗撮動画の中には、僕の母が高校生だった頃に流行っていたルーズソックスを履いた女子高生が映っている年代物の動画もある程だ。


 しかし、萌子ちゃんに教えてもらったサイトには、最近撮影された動画が多く、特に「エロ男爵」と名乗る出品者の動画は、京都の女子高生を狙った動画ばかりがアップされていた。


「エロ男爵」のマイページには、同じサムネイルの動画が無料と有料のセットになって表示されていて、その違いはモザイク処理の有無と再生時間の長さだった。


 恐らく、無料動画は有料動画に導く為のプロモーションビデオになっているのだろう。


 僕は無料動画の何本かを観ることにした。


 動画の多くがエスカレーターに乗った女子高生を下から撮影したモノで、モザイクのかかったスカートの中と後姿の画像がセットで映っており、売り文句は「完全生パン、見せパンは一切ありません」だった。


 動画の出品者である「エロ男爵」はH高校だけではなく多くの学校で問題視されていて、教育委員会や警察も動いているそうだが、被害届すら出せない状況にあるとのことだった。


「エロ男爵」の手口は巧妙で、下着のアップの動画と後姿が映った動画は編集で繋がれており、盗撮された人物と後姿の人物が同一人物であることが証明できなかった。


 それに、下着姿を下から映した動画が、自分の動画であると証明することは恥ずかしいことだった。


 もし、被害届を提出したら、警察や検察、それに裁判官などの多くの男性に、自分の股間の動画を証拠品として見られる事になる…それは、耐えられない事だった。


「エロ男爵」は生下着の女性しか動画にアップしていなかったので、女子高生たちは見せパンを穿いて盗撮を防ぐしかなかった。


 そんな中、僕は気になる動画のサムネイルを発見した。


 そのサムネイルには、他の動画と同様に制服姿の女子高生の後姿が映っているのだが、リュックとスカートが、僕が持っている物と同じだったのだ。


 僕は恐る恐るその無料動画を再生させた。


 その動画には、京都駅ビルのエスカレーターに乗っている背の高い女子高生が映っていたが、それは紛れもなく僕だった。


 僕の穿いているスカートは制服風の市販品で、スカートのチェック柄が本物の制服とは微妙に違っていた。


 しかし、それだけでは、その被害者が僕だとは特定できない…それに、無料動画では股間がモザイク処理されていたので、下着のデザインも確認できなかった。


 ただ、その動画に映っている女子高生は、制服のスカートの下にフレアスカートを重ね履きしていたのだ。


 男性には分からないと思うが、スカートは意外にも保温性に優れていて、夏場はスカートの中に熱がこもるので、通気性の良い生地のスカートを裏地なしで着用するのが一般的だった。


 僕のように、夏場にスカートを重ね履きする女子高生は皆無と言ってよかった。


 自分が盗撮の被害に遭う…僕は想定外の事態に困惑していた。


 僕が観た無料動画の再生数は100万回を超えていて、一本300円の有料動画の再生数は500回を超えていた…僕のパンチラには15万円の価値があるようだ。


 僕は「エロ男爵」の無料動画を全て確認した…すると、サムネイルに僕が映っていない動画にも、僕の逆さ撮り動画が映っていた。


 僕は合計で3本の動画に映っていた。


 僕は自分の股間を映した動画が公開されていることに関して、恥ずかしいとは思わなかった。


 ただ、男の尻を映した動画にお金を払った男たちが哀れに思え、それと同時に「エロ男爵」に対する怒りが込み上げた。


 僕は「エロ男爵」に撮影の許可を出したことはなく、当然、出演料も貰っていない。


 これで「エロ男爵」が被写体になった人物に対し、無断で撮影と動画の収益化をしていることが確定した。


 僕は盗撮犯に制裁を加えることにした…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る