♯14 ナンパ
「今度から、コスプレをする時は、ちゃんと準備しないとねw」
「そうですねw」
お揃いの制服に着替えた僕たちだったが、瞳美ちゃんの制服の着こなしが変わっていて、彼女は僕や早耶ちゃんと同じようにスクールベストを着ないで、スカートのウエスト部分を折り曲げスカート丈を短くしていた。
ただ、スカート丈を短くしたことで、体操服のハーフパンツがスカートの裾から覗いていたので、瞳美ちゃんも僕たちと同様にスカートの下にショーツだけを穿くようになっていた。
「久しぶりに、直にスカートを穿くと、何かスースーしますねw」
「蒸れなくて気持ちいいでしょw」
「うんw」
「じゃあ、行こうか?」
「はいw」
制服に着替えた僕たちが素早く落書きブースに移動したことで、男子大学生たちは、僕たちがメイドコスプレをしていた女子高生とは気付いていない様子だった。
「良かった…気付かれてない…」
「ここには、制服の女子しかいないから気付かなかったのかもねw」
「えっ!これが…私?」
瞳美ちゃんは、落書きブースの画面に映し出された自分の全身写真を見て驚きの表情を浮かべた。
画面にはプリ機によって加工された僕たちの姿が映し出されていて、中でも、瞳ちゃんのスタイルが一際綺麗に映っていた。
僕と瞳美ちゃんは同じ位の身長だったが、骨格がしっかりしている僕はスポーツ選手のような印象で、一方の瞳美ちゃんは、華奢な骨格からファッションモデルのような印象になっていた。
「すごい! 麻里子さまも綺麗だけど、瞳美もモデルさんみたい!」
「やっぱ、本物の女の子には敵わないねw」
「そんな…私なんか…」
「もっと、自信を持って! 瞳美ちゃんは凄く可愛いんだからw」
メイクをしたことで、瞳美ちゃんの中で何かが変わったようで、彼女はもう地味な少女ではなくなっていた…。
「え〜! もう帰っちゃうんですか?」
僕たちがプリクラコーナーを出ようとすると、先程、僕がメイクをしてあげた3人組の女子高生が声を掛けてきた。
彼女たちは市立H高校の2年生で、早耶ちゃんと共通の友人がいたことから、僕とも仲良くなっていた。
「これからコスメを見に行くのw」
「えっ! 私たちもついて行っていいですか?」
「勿論、いいよw」
「やった!」
僕は5人の女子高生を引き連れて、彼女たちのコスメ選びのアドバイスをすることになった。
「ただ、どうやってここから出ようか、迷ってるんだ…」
「そう…さっきのエロ大学生たちが、こっち見てるし…」
「げっ…」
プリクラコーナーの出口には、メイド姿の瞳美ちゃんを見て騒いでいた男子大学生たちが立っていた。
彼らが僕たちを狙っていることは明らかだった。
彼らは勢いだけでナンパをしようとしていたので、恐らくノープランだと思われた。
きっと「一緒にボーリングしよう!」とか言い出すに違いない…最悪だ。
僕がいつものようにナンパを断れば済む話だが、ナンパを断られた男たちが逆ギレをして罵詈雑言を浴びせてくることも想定できた。
僕は早耶ちゃんたちが傷つく姿を見たくなかった。
「じゃあ、裏から出ましょうか?」
「裏?」
「はいw 店員さんに頼めば、従業員用の通路を使わせて貰えるんですよw」
「プリクラコーナーから直接裏通りに出られるんですw」
市立H高校の3人は、このゲームセンターの常連のようだった。
僕たちはH高校の3人に先導され、ゲームセンターの裏にある路地に連れて来られた。
「イケメンだったら、ナンパされても良かったんですけどねw」
「ナンパについて行くことあるんだ」
「ありますよw したい時とかw」
僕は女装をするが、男には全く興味がなかったので、ナンパ男たちを全て無視してきたが、H高校の子たちは、セックスがしたい時はナンパを受け入れているようだった。
僕が女装外出をして驚いたことの一つが、世の中にはナンパ男が多くいることだった…。
男モードの時の僕は、女性をナンパした経験がなかった。
それは、ナンパが非効率的な行為だと考えていて、街でいきなり声を掛けられて、ついていく女性はいないと思っていたからだ。
と言うか、そもそも男モードの僕は女の子にモテていたので、ナンパをする必要がなかった。
元々、可愛い容姿をしていた僕は、子供の頃から女の子にモテていて、女装をするようになってからは、その傾向がより顕著になっていた。
実際に女の子の洋服を着て街を歩くことは、女性の気持ちを理解する上で、とても重要なことだった。
女性の衣類の殆どが、機能性や耐久性を無視し、デザイン性を最優先にしていた。
例えばハイヒール…高いヒールのパンプスやサンダルを履いていると、男の時には何とも思ってなかった道路の僅かな変化に気付く様になっていた。
一見、平坦に見える道路でも、僅かな段差や緩い勾配があり、靴底の接地面積が少ないハイヒールだと
特に、側溝やマンホールに開いている小さな穴は、罠と言ってもいい存在で、ピンヒールが嵌ると転倒だけでは済まされない可能性があった。
女性と並んで歩く際、男性が車道側を歩くことが良い事とされているが、本当に危険なのは側溝のある歩道側で、路面状況に応じて女性をエスコートする必要があった。
それに、車道側を歩いても鉄やアルミニウムの塊である自動車から女性を守ることは不可能で、全く意味のないことだった。
車道側を歩くことで守れるのは小さな子供だけで、子供が車道に飛び出す事を未然に防ぐことは出来るだろう。
僕は女性が日常的に困る事を実体験として知っていたので、男モードの時は、一緒にいる女性を無意識の内にエスコートしていた。
その影響もあり、男モードの時の僕は、大学で一番と言っていい程、女性にモテる男になっていた。
僕はナンパをする男の気持ちが分からなかったので、H高校の女子高生たちに彼らの生態について聞いてみた。
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