♯13 風俗嬢みたいな僕たち

「これで、完成?」

「そうみたいですね…」


 僕たちは無料レンタルのメイド衣装に着替え、お揃いのカチューシャを装着したが、何かが違っていた。


「あっ、ニーハイソックス…」

「あっ…それだ…」


 僕たちはコスプレ衣装の違和感の正体に気がついた。


 無料レンタルの衣装にはソックスが付属しておらず、僕たちの格好は超ミニのスカートに生足という痛々しい格好になっていた。


 その姿は、性サービスを提供する風俗嬢のようで、可愛さとは程遠い安っぽいエロさで溢れていた。


「どうする?」

「やめときますか?」

「折角だから、一枚だけ撮りましょうよw」


 早耶ちゃんが僕と瞳美ちゃんの手を掴んでフィッティングルームから出ると、プリクラコーナーにいた女子たちの視線が一斉に僕たちに突き刺さった。


 やはり、僕たちの不完全なメイド衣装は浮いていた。


「あっ!可愛い!」


 すると、先程、僕がメイクをした3人組の女子高生が近くにやって来て、僕たちの容姿を褒め始めた。


「やっぱ、麻里子さまってスタイルいいですね!」

「本当!瞳美ちゃんもセクシーだし、早耶ちゃんも可愛いしw」

「私たちも、コスプレしようかw」


 思わぬ援軍を得た僕たちは、恥ずかしいメイド衣装のままプリクラコーナーを歩き始めた。


「スゲー! 何!あの子!」

「マジか! めっちゃエロいw」


 プリクラコーナー自体は男子禁制だったが、通路は外から丸見えで、僕たちを見た大学生風の男子たちが騒ぎ始めた。


 彼らの注目は、瞳美ちゃんに集中していた。


 僕と早耶ちゃんは同じデザインのメイド衣装を着ていて、襟にリボンがついたブラウスが胸元を隠し、エプロン風のスカートが太ももの半分を隠していた。


 しかし、瞳美ちゃんは、僕が着るつもりだったメイド衣装を着ていて、その格好は、大きく開いたスクエアネックの胸元から胸の谷間が露出し、コルセットで絞られたウエストはその細さを更に強調していて、大きく広がったスカートは高身長の瞳美ちゃんには短過ぎて、直立していないと中が見える状態だった。


「おっ!パンツが見えたw」

「白だ!」

「スゲー!パンティからケツがはみ出てるぞw」

「本当だw パンティがケツに食い込んでるw エロッw」


 瞳美ちゃんの顔は真っ赤になっていた。


 僕たち3人の中で、白いショーツを穿いているのは瞳美ちゃんだけだったので、彼女は自分が男子たちに注目されていることが分かったようだ。


 僕は恥ずかしがる瞳美ちゃんの白いショーツと、そのショーツからはみ出ているお尻の膨らみが見えた瞬間、股間が疼き始めた。


 瞳美ちゃんの乳房やショーツ姿を間近で見たり、ブラジャーを装着する為に乳房を直接触ったりしても、僕の股間は無反応だったのに…。


 僕は自分と同じ男子大学生が騒いでいる姿を見て、心の性別のスイッチが切り替わったのか、それとも、男たちの性の対象となり恥ずかしがっている瞳美ちゃんに興奮したのか…いずれにしても、僕は男として性的に興奮していた…。


 僕たちは一番近いプリ機の中に逃げ込み、カーテンで男たちの視線をさえぎった。


「やっぱ、この格好はヤバかったみたいですねw」

「うんw あれっ、瞳美ちゃん…」

「胸が…苦しいです…はぁ…はぁ…はぁ…」

「大丈夫?」


 瞳美ちゃんは緊張のあまり過呼吸になっていた。


 普段から地味な格好をしていた瞳美ちゃんは、男たちからエロい目で見られる事がなかったようで、僕には彼女が性的に興奮しているようにも見えた。


「瞳美! 大丈夫? ゆっくり息をして…」

「はぁ…はぁ…はぁ…」


 早耶ちゃんは瞳美ちゃんの手を握り、過呼吸を鎮めようとしていた。


 その甲斐もあってか、瞳美ちゃんの喘ぎ声のような呼吸は徐々に整い始めた。


「さっきの男の人たち、私のことを見てましたよね?」

「うんw 私が選んだ衣装が少しエロ過ぎたのかもw ゴメンねw」

「エロい? 私が?」


 目つきが悪く背の高い瞳美ちゃんは、男性からモテた経験がなかったようで、自分が男たちのセックスの対象になった実感がないようだった。


「うんw 全員しゃがんで、瞳美のスカートの中を覗こうとしてたよw」

「えっ!」

「きっと、アソコがギンギンになってるよw ねえ、麻里子さまw」

「えっ…うんw 多分ねw」


 僕は早耶ちゃんの問い掛けに曖昧に答えたが、僕自身の陰茎もミニスカートの中で勃起していたので、あの男子大学生たちも僕と同様の状況になっていることは間違いなかった。


「嘘…私なんかに…」

「嘘じゃないよw 瞳美ちゃんは、もっと自分に自信を持ったらw」

「そうそうw 麻里子さまの言う通りだよw あっ、そうだ! 瞳美がお金を入れて来てよw」

「えっ…」


 僕たちは男子大学生たちの視線から逃げる為に、いきなり撮影ブースに入ったので、まだ、料金をプリ機に投入していなかった。


「さっきは、3人一緒だったけど、今度は瞳美が一人だったらどうなるか試してみたらw」


 自分の女の魅力に疑問を持っている瞳美ちゃんを、早耶ちゃんが強引に撮影ブースの外に押し出した。


「おっ! 出て来た!」

「ねえ! エロいお姉さん、俺たちと遊ばない?」


 瞳美ちゃんが通路に出ると、プリクラコーナーの外から男子大学生の声が聞こえてきた。


 一人だと大人しいのに複数になると騒ぐという男子大学生の習性は、瞳美ちゃんを赤面させるには充分で、彼女は更に興奮した状態で撮影ブースに戻って来た。


「ねっ、言った通りでしょw」

「あの人たち、私を見て凄く興奮してた…」

「それだけ可愛くてスタイルの良い子が、エロいコスプレをしてたら、男なら誰でも興奮するよw」

「そんな…私なんて…」


 瞳美ちゃんは可愛くなった自分に慣れていないようで、撮影が終わってもカーテンの外に出ようとしなかった。


「どうしよう…また、あの人たちに見られる…」

「じゃあ、ここで、制服に着替えちゃう?」

「そうですねw」


 僕たちはプリ機のなかで、制服に着替えることにした…。

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