♯07 本物の制服

 僕たちは事前に打ち合わせをした通り、プリクラショップに向かうことにした。


 本来ならば、商業施設の中にあるパウダールームでメイクを教えれば良かったのだが、公共のパウダールームは女子トイレに併設されているケースが多く、男である僕が入る訳にいかなかった。


 カラオケボックスでメイクを教える案もあったが、カラオケボックスの部屋は照明が暗くメイクには不向きだったので、プリクラショップに行くことになった。


 大きなゲームセンターにあるプリクラコーナーは広く、プリ機も充実していたが、明るいパウダールームが併設されていて、ヘアアイロンも無料で貸し出されていた。


「あの~、これ…良かったら着てみませんか?」


 早耶ちゃんがそう言うと、大きな紙袋を僕に手渡した。


 紙袋の中にはクリーニングのビニールに包まれた制服が入っていた。


「うちの制服なんですが、サイズ的には大丈夫だと思いますw」

「えっ?」

「私と一緒にいる時は、麻里子さまにも同じ制服を着てもらいたくてw」

「いいの?」

「はい! その制服は先輩のお下がりなので、麻里子さまに差し上げますw」

「えっ!嬉しい!早耶ちゃんありがとう!」


 K女の卒業生の多くが、高校の隣にあるK女子大学に進学するので、早耶ちゃんたちは大学生になった卒業生と接する機会が多く、先輩が着なくなった制服を入手し易い環境にあった。


 僕は無料レンタルされているコスプレ衣装に着替える為のフィッティングルームで、K女子大学附属高校の制服に着替えることにした。


 紙袋の中には、ブラウスやスカートの他にブレザーやカーディガン等の制服一式と、何故か体操服や水着まで入っていて、新品で買えば10万円近くする物だった。


 僕が着ている制服風のスカートは、ドンキホーテで売っているコスプレ衣装のような粗末な作りではなかったが、やはり、本物の制服は縫製や生地の質感が違っていた。


 僕は本物の制服のブラウスに袖を通したが、サイズがLだった為、ブラジャーがボタンの隙間から見えていた。


 僕は胸の膨らみをBカップの大きさに設定していたが、アンダーバストが大きいのでトップバストが95センチもあった。


 僕は自分の胸の谷間が気に入っていたので、制服女装をする以前は、胸元が開いたトップスを好んで着ていたが、下着を露出させることはなかった。


 胸の谷間を露出させることはセクシーだったが、下着を露出させることは、だらしない印象になるからだ。


 僕はセクシーな女になりたかったが、だらしない女になるつもりはなかった。


 僕はK女の正式なブラウスを着ることを諦め、自前のブラウスにK女のネクタイだけを装着した。


 小さいサイズの洋服は、洋服自体の見た目は可愛いが、実際に着てみると体が大きく見えるので、僕は3Lサイズのブラウスを着ていた。


 オーバーサイズの洋服は体を華奢に見せる効果以外に、体のラインを隠す効果もあった。


 本物の女子高生も体のラインを見せたくないようで、夏場でも長袖のブラウスを着て、たるんだ二の腕や脇の下を隠していた。


 僕の脇の処理は完璧で二の腕も弛んでいなかったが、逆に引き締まった腕が女らしくなかったので、僕も彼女たちと同様に夏場でも長袖のブラウスを着用していた。


「どう?」

「きゃ〜!すごく似合ってますw」

「完璧に着こなしてますねw」


 僕はブレザーやベストを着用せず、ブラウスと夏服のスカートだけを着て、早耶ちゃんと同じようにネクタイを緩め、長袖のブラウスの袖とスカートのウエスト部分を2回折り返していた。


 早耶ちゃんとの違いは、スカートの下にミニのフレアスカートを重ね履きしていることだった。


 本来なら、ヒップパッドを装着してお尻を大きくすればよいのだが、ミニスカートだと太ももまで覆うパッドが裾から見えてしまうので、僕は苦肉の策でスカートを重ね履きしていた。


 下に穿いたフレアスカートはメイド衣装のパニエと同じ効果があり、僕の下半身のシルエットを女らしくしてくれた。


 それと、本物の制服はスカートのプリーツがワンウェイプリーツではなく、今の制服のトレンドであるボックスプリーツであることも、僕のテンションを上げてくれた。


 やはり、ミニスカートは可愛い…パウダールームの大きな鏡に映った自分を見て、僕は改めてミニスカートが好きなのだと実感した。


 そもそも、僕が制服女装を始めたきっかけが、ミニスカートを穿きたかったからだ。


 女装外出を始めた頃は、僕と同年代の女子大生が着ているようなパンツやロングスカートを着用していたが、メイド衣装を着た時の可愛さを感じることはなかった。


 しかし、私服でミニスカートを穿くと目立ち過ぎてしまう…それは、実生活の中で、わざわざミニスカートを選択するシチュエーションがないからだ。


 ミニスカートには実用性や機能性が一切なく、見た目の可愛さと多少の涼しさを感じるだけで、唯一、実用的な機能は立小便がし易いことだったが、それは、一般的な女性には関係のないメリットだ。


 そこで僕はミニスカートを穿いていても、理由を求められない女子高生の制服を着ることにした。


 最近の女子高生は、スカートを膝丈にすることが主流だったが、ミニスカートを穿いている子も多くいて、制服姿になった僕が悪目立ちすることはなかった。


 ただ、一般的なミニスカートは丈が40センチくらいで、背の高い僕が穿くと「ワカメちゃん」状態になってしまうので、僕は46センチの膝丈のスカートを穿くようにしていた。


 46センチ丈の普通のスカートは、背の高い僕が穿くと丁度良いミニ丈となり、スカートをカスタマイズする必要がなかった事も好都合だった。


 僕が貰ったK女のスカートは55センチ丈だったので、僕はウエスト部分を折り曲げて自分に似合うミニ丈にしていた。

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