24歳 4

 酒を飲んで、セックスをする。それはゆるやかに習慣となって続いた。月に二回ほどの彼女からの連絡を合図に、僕たちは決まって同じ居酒屋で集まった。

 やはりまだ、お互いのことを話すのは恐れが残っていた。だけど僕たちは、言葉を選んでひとつずつ口に出していった。この七年間の空白のピースを、少しずつ愛でるように埋めていった。ひなたは大学で音楽サークルに入ったこと。なかなか、自分と合うコンポーザーと出会えなかったこと。自分でギターを抱えて、曲を作り始めたこと。何度も何度も、音源審査やオーディションにチャレンジしたこと。そして今、派遣会社で働いているということ。もはや、「歌の仕事をするという夢を諦めたこと」以外の全てのピースが、この空白を埋めていた。もうそれらのピースたちは、彼女が夢を諦めたこと、そのピースの形を縁取っていた。それでも僕はやはり、それを訊ねることは、彼女にそのピースを埋めさせることはできなかった。

 そのあとのホテルでは、僕たちはかえってほとんど言葉を交わさなかった。それはある意味でやけくそのようなものだった。言葉を使って、恐れながらお互いに触れるよりも、身体を密着させてしまう方が手っ取り早く互いの存在を確かめられるように感じた。だけどそれは快楽を身体の熱で融かして脳に流し込んでいるだけで、だからこそそれはただのやけくそだった。そして僕はそんな中でも、決してブラジャーを脱がすことはなかった。


 この習慣が続いて三ヶ月ほど経った頃だろうか、ひなたから連絡が来た。またいつものだろうと思い、軽くトークを確認する。

『今週の金曜日、私の家にきてほしい』

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