『バス停』 中

 しかし、ふりかえれば、なにもいません。


 肩透かしでしたが、さっぱり訳がわからない。


 スマホを確認すると、その辺りのお話が、なぜだか、無くなっております。


 だれかが、介入しているのは、間違いなさそうです。



 これが、もし、ぼくの書いたお話しに沿って進むのだとしたら、次はどうなるのかしら。


 む、……しかし、誰かが、気に入らなければ、書き換えられてしまうらしい。


 あれは、いったい、誰が、書き換えたのでありましょう。


 なにしろ、ぼくは、地獄に行きたかったのだろうか?


 そこは、よく分からないです。


 なぜなら、天国に行けるような、立派な業績は上げていないから。


 出世もできなかったし。


 病気で、リタイアしました。


 若い方からは、非難もありました。


 多少、陰でずるをしたとしても、出世した人は、立派な人な訳です。


 みなから、讃えられます。


 でも、天国がだめなら、地獄しかないのかしら。


 それでは、イエスか、ノーか、それだけの、二択ですよね。


 いやいや、それは、たぶん、違います。


 そうではないのです。


 どちらでもない、ごく、当たり前の終わりかたがあるのです。きっとね。


 お金を積まなくたって、実績がなくたって、不信心だからって、だから、地獄に行かされる、という訳がないです。


 それでは、理不尽に過ぎますでしょう?


 

 しかし、いまの状態では、このお話を、なんとか内容確認し、修正する必要に迫られているわけではないですか。


 そう。ぼくが書いたのでは、このさき、巨大カタツムリさんが現れます。


 そのお話しでは、ぼくは、うまく、道路脇のポプラの木にかくれて、難を逃れるのです。


 すると、巨大カタツムリさんは、たちまち、おばあさんに変身し、ぼくに、帰りかたを教えてくれるのです。


 ただ、バスは、たしかに、1000年に1便で、おばあさんの出す質問に、正しく答えないとなりません。


 今日は、1000年めで、バスはすぐに来ると言います。


 でも、課題を解かなければ、乗れないのだと。


 すると、また、1000年待ちになります。


 ぼくは、幸いにして、うまく答えて、またまた、反対側に突如現れたバス停から、バスに乗って、現世にもどるのです。


 そう書きました。


 しかし、今、見れば、その場面には、こうあります。


 『巨大カタツムリさんは、ぼくを引き殺し、と言っても、すでに、死んでいるようなものだが、とどめをさして、死骸を背中に載せ、猛スピードで、終点の、地獄ステーションに連れて行くのでした。』



 冗談ではありません。


 はやく、修正しなくては。


 道の右側の、彼方に、何かが現れました。


 激しい砂煙が、上がっています。


 『でたな。なんとか、通信ができる場所を早く見つけないと、まずいな。』


 当然、ぼくが狙ったのは、道路脇に立ち並ぶ、ポプラの木です。


 ところが、なぜだか、道路脇に侵入できないのです。


 見えない壁があります。


 バリヤー、と、言う感じ。


 『おかしい。そんなこと、ぼくは、書いてないぞ。』


 と、さらに初めの方を見返すと、なんと、ありました。


 『道路脇にあるポプラ並木には、全体に、正体不明のバリヤーが張られており、その先には立ち入れないのであります。』


 『あや〰️〰️〰️。こんなこと、書いてないよ。消す、消す。くそう。だめか。やっぱり、つながらないな。』


 巨大かたつむりさんは、大変な高速で移動してきます。


 ま、そうしたことが、書いてあるわけですから。


 むむむ。


 その、恐ろしい姿が、もう、はっきりと見てとれます。


 まさに、怪獣です。


 道幅、10メートルはありそうな、広い地獄街道。


 そのギリギリいっぱいを、唸りをあげて進んでくるのです。


 頭の高さは、たぶん、15メートルは、ありそうです。


 あんなのに轢かれたら、たしかに、ひとたまりもありません。


 漫画で言えば、ぺらぺらになります。


 と、ふと、ぼくは、気がついたのです。


 『あ、そうだ。』


 ぼくは、最初、こう書きました。そうして、それは、あとから、ぼつ、にすることにしたのです。


 

 『ふと、地面を見ると、なにやら、マンホールみたいなものがあります。上の砂利をかき分けてみると、はっきりわかりました。それは、わりに、簡単に開いたのです。』



 こんなに、うまくいって良いわけ、ないけれど、ぼくは、間一髪、実際に、その、マンホールを見つけました。


 巨大かたつむりさんは、もう、目の前です。


 


        ⭕




 穴のなかは、当たり前ですが、真っ暗です。


 でも、階段があったのは、ますます、幸運です。


 マンホールなら、階段があっておかしくないからかもしれません。


 下まで降りきり、スマホで周囲を照らしてみて、またまた、ぼくは、唖然としました。


 なんと、それは、つまり、穴があるだけで、どこにも、つながってなかったのです。


 お話を、途中止めにしたから、当然かもしれません。


 『まずいなあ。まさか、ここに、閉じ籠るわけにもゆかないしなあ。』


 また、上に上がるしかないのでしょうか。


 でも、そこで、スマホを眺めながら、アンテナが、立ってるのに、気がついたのでした。



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