第37話『呪いの勇者は、呪われる!?』


 「カケル、本当に来るのかな?」


 「来ると思うぞ、エリィ。アイツらは、殺しに素直だから」


 襲撃当日の日中、前日のアクアの頼みで渋々、魔王軍幹部の迎撃を引き受けてしまっていた。まぁ、自業自得なんですけどね。首狩りの王を倒してしまったことが今回の原因だし、今更逃げる訳にもいかない。


 迎撃するって言っても、倒してしまおうなんて一切考えていない。戦闘を避け、エルムーアに侵入させずに追い返すのみを考えて行動するだけだ。難しいだろうが、やり遂げるしかないよな。


 アクアに教えてもらった接近ポイントに、俺とエリクシア達は待機して魔王軍幹部の到着を待つ。奴は単騎で乗り込み、街で暴れるつもりなんだろう。強さには自信ありと見て、慎重に合図を出す。


 「クゥーン!」


 上空に偵察させていたブレッドが、俺に異変を察知して教えてくれた。もう近くまで来ているんだろう。後戻りも出来ないので、ブレッドが教えてくれた方角に進み待ち受けることにした。


 「おや? この殺気、其方はもしや勇者かの?」


 なんと、ヨボヨボな爺さんが待ち構えていた。爺さんで合ってるんだろうか、もしくは婆さんか。年食ってる奴は、性別が分かりづらいのがいけないよな。


 昔は、てんで判別出来なくて警部にドヤされたけど、今はまだ、多少マシになったと思ってたんだが、全然そんな事無かったよ。ごめんなさい、俺はあれから成長してないようです。


 「お前か? 『臓物潰し』ってのはよ」


 「ほほ、よく知ってるの若いの。お前さんのこともよく知っておるぞ? 首狩りを倒したらしいじゃないか。相当な手練れじゃな?」


 「カケル、あのおじさんヤバいかも。あれは、呪詛師だよ」


 「たかが呪詛師だろ? うちにはマリエルが居るんだし大丈夫だろ」


 「ほー。随分余裕じゃのー」


 まぁ、恐る要素なんて皆無だしな。シスターが居る以上、俺らには呪いなんてすぐ解呪出来るだろう。一部、俺みたいな例外がいるけどね。あれ? 他にも例外あったりする?


 「わしはお前さんだけ殺せば充分なんじゃよ。じゃ、苦しみ死ぬがよい。この呪詛は、発現に一日かかるが威力は強烈よ。腸が膨張し、腹をブチ破りながら主人を潰していくのだから」


 訳の分からない呪詛の口上を垂れていて、今やっと終わったようだ。特別痛みも無いし、変化もない。やはり、俺の呪いの方が強いらしい。


 こんなことで張り合いたくないけど、このチャンスを利用し痛がる振りだけして死んだ振りしよう。そうすれば、もうエルムーアには寄って来ないだろうからな。


 「段々と痛みが強くなって来たじゃろ? 貴様への、死のカウントダウンじゃ」


 「グワー。イタイー。死ンジャウー」


 ーー、バタッ!!


 上手く、演技出来ているんだろうか。爺さんは、俺の苦しむ姿を見るなり笑いながら転送魔法陣で何処かに消えていった。


 消えてくれたようで、安心した。死んだ振りなんて、やめようと起き上がるとマリエルが俺に泣きながら泣きついてきた。


 「嫌……です。カケルさん、死なないで、下さい……」


 「何だよマリエル、俺が死ぬ訳ないだろ?」


 少し鬱陶しかったけど、マリエルも少しは心配出来るんだなと思ってしまい、照れ隠をしてしまった。


 マリエルって、たまに本気で心配してくれる所が本当に可愛いよな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る