第38話『呪いの勇者と臓物潰しの再来』
「今日もいい天気ですね、エリィさん」
「そうだね、カケル。今日も平和だね」
臓物潰しに呪いをかけられた三日後の朝、俺はピンピンしていて、毎日のルーティンであるエリィの髪を櫛でとかしていた。全然呪い効いてないんですもの。気にした俺が馬鹿みたいだ。
マリエルやアリアドネは、俺がいきなり倒れるんじゃないかと、心配してたみたいだけど流石に三日も経てば、大丈夫だろうと放って置かれていました。全く、心配しすぎだよな。俺、最恐に呪われるってのにさ。
いつものように屋敷で団らんしていると、アクアが俺の体調を確認する為に訪問して来た。毎日同じ時間にやって来て、情報を交換するのも習慣化しているので、アクアもこの場所が心地よいらしい。
面倒だからもう家に住めばいいと、提案したこともあったけど、アクアがそれを拒むので毎日屋敷で会う週間が出来てしまっている。そんなに来たってたまに話題がない日だってあるんだよな。何が狙いなんだろう。
「カケルさん、臓物潰しは執念深いですからね! 決して生存を悟らせないで下さいよ!」
「分かったって言ってるだろアクアさん。これで、晴れて仲間と共にスローライフ出来るんだからな。もう厄介事はごめんだぜ」
「もう、カケルさんは直ぐ調子のいい事言うんですから……」
会う度に、外出は控えろだの、死んでると偽れだの、鬱陶しくてたまらん。分かってるっての。これで、俺も楽な生活が出来るってもんだ。
期待と希望を胸に、まぁ、マリエルに胸なんか無いが、俺達は念願のスローライフが出来るんだ。ただただ、平和に暮らしたいだけなのに、色んな奴に引っ掻き回されて散々だったならね。
妄想にふけっていると、ある疑問が頭に浮かんできた。あんまり口にしたく無いけど今後のこともあるし、確認だけでもしておこうと思う。
「なぁ、アクア。もし、俺の生存が臓物潰しにバレたらどうなるんだ?」
「何言ってるんですかカケルさん。そんなの、この街を本気で潰しにかかるに決まってるじゃないですか」
|(なんか、そんな気したんだよなー)
何度も大丈夫だとアクアに念を押し今日の話しも終わりに差し掛かった時、アリアドネが何かの異変に気づき警戒態勢に入っている。知らせを受けて、エリクシアや、マリエルを集めて警戒することにした。
「カケル様! あそこの床に転送魔法陣があります! 何か来ますよ!」
「どうしてこんなところにあるんだ!? とりあえず、みんなは戦闘準備だ。心してくれ!」
床が光っていて、何者かがこの屋敷に転送されて来ている。
正直言って、その正体に何となく気づいていたんだけどアクアの言葉が脳を過ぎっていた。
『街を本気で潰しにかかるに決まってるじゃないですか』
また、俺のせいなんだろうか。転送されて来たのは、以前、呪いをかけてきた呪詛師、またの名を『臓物潰し』が俺らの前に姿を現れていた。
絶体絶命のピンチかもな。そのジジイのニヤけズラに、戦慄してしまっていたのです。
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