第36話『呪いの勇者と臓物潰しの呪詛師』
「カケルさん、マズい事態になってしまいました……」
マリエルの悲しき事件から一週間が経つ頃、何やら慌てて、アクアが俺達の屋敷に駆けつけていた。また、厄介事を持って来たんだろう。現実から目を逸らしたいですね。
いつも、面倒くさい案件ばかり持って来てギルド本部は、俺の事を何でもする雑用係と、勘違いしてるんじゃないんだろうか。
気が滅入ってしまうよな。まぁ、話しだけは聞いてやろうと思い、アクアを屋敷に入れ、応接間まで案内した。出来るだけマシな案件であることを祈るしかねぇよな。
「で? 話しって何だよ」
「魔王軍幹部が、このエルムーアを襲撃に来ます。カケルさんの力が必要なんです、助けて下さい!」
「おいおい……。 マジかよ……」
こんな手練れがいなくも無いけど、ほぼ駆け出し冒険者が集う、始まりの村のような街に魔王軍幹部が襲撃に来るなんて、ただ事じゃないよな。
何か理由があるんじゃないか思い、アクアに魔王軍幹部の襲撃目的について聞いてみることにする。後に、聞かなければ良かったと後悔するんだけど、自業自得だから仕方ないと割り切ることにした。
「魔王軍側で噂になってたんですよ。首狩りを討伐した手練れの勇者が、この街に潜伏してるってね?」
「そんな奴いたのか! 物騒だな! 夜道には気をつけないと……」
「カケルさん、俺は関係ないみたいな態度やめてくれます? どう足掻いても貴方の事でしょ! 責任、取って下さいね?」
絶望的な状況です。助けて欲しいのは、俺の方だよ馬鹿野郎が。一番に食い込んでくるぐらいの、厄介事じゃねぇかよ。俺の呪いは、不幸まで呼び込んでくるらしい。
アクアからの話しによれば、襲撃は明日の日中に行われるらしく、中でも変わってることが軍勢の数にある。何と、魔王軍幹部が単騎で、エルムーアに進軍してくるとのことだった。
余程、自信があるのだろう。一人で充分だってのかい、笑わせてくれるよな。全く怖くなんか無いが、今から夜逃げする準備をしておこう!
「相手は魔王軍幹部、通り名は『臓物潰し』と呼ばれています。相手の臓物を引きずり出して、殺す様からこんな名前で通っています。カケルさん、頑張って下さいね!」
「何で、俺がやる前提で話しが進んでいるんだよ! もう嫌なんだけど。俺の身体いじくり回さないでくれ!」
うちのパーティのマスコット、ブレッドやエリクシア、マリエル、アリアドネは、やる気に満ち溢れています。
勘弁してくれよ。そんなに乗り気だと、戦いたくなくても、戦わないといけなくなるじゃねぇか。
嫌だとは言えずに、俺達は明日の臓物潰しからの襲撃に備え、エルムーア防衛戦を決行する事になってしまいました。
ーー面倒だから戦わないぞ!
ーー魔王軍幹部を追い返すだけだからな!
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