第二話 春の出会いは少しだけ楽しみ
おれは伊織の言う【陰気】って言葉に無性に何故かムカつきを覚えた。
陰気って言葉には俺は嫌ってほどに陰口を言われたくらい。
『アイツ話し掛けても何にも話さないよな。だから陰気だって裏で言われるんだよ。』
『なんかクールぶっててムカついてくるよな。陰気とクールの意味を履き違えてるよな。』
『陰気なくせに勉強出来て運動も出来る。なのにコミュ障とか笑える。』
『それにアイツの成績だと国立の大学付属高校も推薦で入学出来るのに蹴っ飛ばしたらしいよ?私達から見て嫌味だよね~。陰気なくせに。』
何にも知らねぇ連中が俺の何が分かる?お前らに俺の苦しみが分かるのか?俺がどれだけ悩んで傷付いてきたかテメェらには分かるのか?
分かるわけねぇよな!!普通に育ってきて普通に今を楽しんでるお前らに分かる訳がねぇよな!俺もお前らに俺の苦しみや悩みに痛みが分かってたまるかよ!!
沸々と湧き上がってくる何にも表現が出来ない感情がドス黒く込み上げてくる。
「おい、?み殺すぞ?このチビが。」
俺は感情が限界まで昂り、自分の知らない間に眼光は鋭く雄々しき白と灰色の毛並みをした獣の姿になっていた。
四肢に構えて今にもその牙で伊織を噛み殺そうと唸りを上げ殺気に満ちている。
その姿に伊織はもちろん。トラも驚いた様子で鋭い眼光から発せられる刺々しい殺気に満ち溢れていて伊織もトラも額から汗が流れ落ちる。
だが、絵里だけは違う。絵里は獣の姿をした俺にも一切として怖じ気ないで俺に歩みよって。俺に抱き付いてくる。
「落ち着いて。ごめんね一哉。伊織は昔から強さが全てって事を周りから言われ続けられてきた娘なの。だから、伊織は本当は良い娘なの。私から謝るから伊織を許してあげて。」
絵里は俺の頭を仔犬を撫でるかのように優しく撫でてから抱き締める。すると不思議と俺の感情が落ち着き始めて、俺は元の姿に戻る。
「ほら、伊織。一哉に謝って。」
「あっ、わ、わっちが悪かったすまぬ。」
「別に大丈夫。謝ってくれるなら。俺も済まない。つい、カッとなった。」
その後に伊織から仲直りの握手をした。どうやら俺は伊織とも曲がりなりにも仲良くなれそうだな。
「おい、皇 一哉。ちょいとツラ貸しな。」
すると教室の出入り口から聞いた事ある声が聞こえてきた。
俺を始め絵里、トラ、伊織がその声の主に目を向けると金髪に両耳に複数のピアス。誰から見ても目付きの悪さに特徴があるまさにDQNのアイツ。
金剛 骸だ。
「なんの用?」
「良いから来いよ皇。」
金剛は『良いからゴチャゴチャ言わずについて来いよ。』と言わんばかりの目をしていて、ソレを断れば奴が暴れ出して教室が滅茶苦茶になるのは必死。
「待って。」
俺は一言も発さず奴の所に行こうとすると絵里が俺の服の袖を掴む。何か不安がっている絵里の眼差しに俺は絵里の頭に手を乗せる。
「大丈夫。」
そう言うと俺は金剛の元へ行くと奴は俺に顔を近付けてメンチを切りながらドスの効いた声で言う。
「てめぇ。さっきは俺の邪魔をしてくれたな。なんの権利があって俺の邪魔をする。」
「ふん。権利とは随分と綺麗な事を言うな。権利と自分勝手の違いは分かるだろ?」
「着いてこい。この俺が入学初日でシバク第1号だ。」
「……」
金剛は踵を返し歩き出すと俺は何も言わずに黙って後を着いて行く形で静かに歩き出す。やけに歩く足音が響くかの様にな。
暫く歩いて辿り着いたのは学校の裏庭だろう。人の気配は全くないし、周りは木々で覆われている。こういうのは漫画とか学園ドラマやらで見た事がある。
「おい、何でテメェが俺に呼び出されたか分かるか?」
「さぁね。心当たりがあるならランチのお誘いかね?」
「ふざけてるのか?」
茶化す俺の態度に露骨な苛立ちの様子を見せる金剛。声は更に苛立ちを覚えているのだろう。今にも不満を爆発させて俺に突っ掛かりそうな勢いだな。
「俺はこの学校でトップになる。全ての連中を理不尽と暴力で支配下において【俺をゴミみたいに見下した連中を復讐】する……計画だった。だが!お前が俺の華々しい登場を邪魔しやがった!この学校のトップになり!全ては俺の為の手駒になる、この学園生活の俺の計画だ!!ならば俺の計画を邪魔したお前をブチのめして全校生徒から先公に見せしめで、お前の様な俺を邪魔させないようにする為に俺はテメェをぶっ殺す!!」
「んで?計画?なにそれ?美味しいの?」
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