第二話 春の出会いは少しだけ楽しみ
「では、入学式が始まりますのでぇ皆さんは出席番号の順番に2列に並んで下さいねぇ。」
担任の紺野先生の指示に従い廊下で整列して入学式を待つ1年E組の俺達。式が始まるまで少し時間が掛かるみたいだからトラと少しだけ雑談していると後ろから視線を感じる。
うん。絵里だ。なんだか、口パクで何か言っているようだが、何とか解読してみる。
【お・な・か・す・い・た】
またかよ!絵里の奴は!また血が欲しいのかよ!
心の中で文句を言っていると、そのやり取りに気付いたトラが何かニヤニヤした顔で俺に話し掛けてくる。
「後ろにおるオナゴはお主のコレかのぉ?」
トラは小指を突き立てながらニヤニヤしながら近付いて話し掛けてくる。
「いや、別にそんな……のじゃあねぇし。」
「そうかぁ。しかし、あのオナゴは中々の別嬪と見るぞ拙者には。」
「まぁ、確かに顔は整ってるよな。」
「それに何か色気を感じる身体付きをしているし。それにあの体型は乳房は結構あって腹はしまっていて、それにお尻は安産な体型だのぉ。将来の嫁さんにはカズとはピッタリだと思うのぉ。」
「あ、あのな!べ、別にまだ嫁とか、そう言うのは俺には、まだ早いと思うんだが……」
「何を言う。拙者が猫だった時代では、お主ぐらいの年齢には結婚していたぞ。」
「……」
確かにトラの時代は15歳で大人扱いされていたため、女子では下手すれば14歳で結婚していたとか。ちなみに19歳で結婚出来ない女子は【年増】とか【行き遅れ】とか簡単に言えばババア扱いされていた。
入学式は学校の体育館でやるみたいだから、体育館へと足を運ぶがトラがあんな事を言うから、ついつい絵里の所へ後ろに視線を向けてしまう。
なんだよ。変に意識しちまうじゃねぇかよ……
取り敢えず。新入生が入場という訳で1年A組、B組、C組の順番に列に並んで座席に座って行き、最後に俺達E組が座席に座り終わって入学式が始まろうとしていた。
そんな中で1人の男子生徒が立ち上がる。すると一瞬の跳躍で壇上へとひとっ飛びする。
何のパフォーマンスだ?
見た感じだと俺らE組の隣のクラスだからD組の奴か?
入学式で壇上に上がって新入生の答辞を行うのは、よくある光景。だけど答辞をやるやつにしちゃあ何というか……アレだよ。アレ。うん。
柄が悪過ぎる。
金髪にツリ目に耳にはいっぱいピアスを着けて、学ランの下には赤いパーカー。見た目は殆どって言うより、そのまんまのDQNだし。
するとDQNはマイクを取り上げスゥ~っと息を吸い込み叫び出す。
『俺の名前は金剛 骸(こんごう むくろ)!俺はこの学校の頭になる!!覚えとけっ!この俺こそが最強の魔物だッ!!!』
どこのカラスの学校だと勘違いしてんだよ。周りを見ろよ。顔がポカーンとしてるよ。てかさ、よく許したよね学校側もさ。確か学校の案内チラシにも素行の悪い不良もOKって書いてあったっけ?
そんなヤレヤレな感じの俺とは裏腹に教師サイドは青筋を立てながら何人か立ち上がりDQNを押さえつけようと壇上に上がる。
「おい!入学式にこんな騒動を起こすとは何事だ!」
「うるせぇよ。先公がよ!」
DQNを改めて金剛 骸が教師をワンパンチでノックアウトさせてしまい、新入生も騒然としてしまい厳粛な雰囲気から喧嘩祭りの雰囲気になってしまう。
「おい、金剛とか言ったな。この学校のトップになるのは、この俺様だ!」
「抜かせ!この雑魚がぁッ!」
「いーやっ!俺こそが、この学校の頂点だ!」
「上等だッ!纏めて相手になってやるよ!!」
DQNはどうやら1人や2人じゃなさそうだな。結構な人数が壇上に上がり込み大乱闘が始まると思いきや一瞬にして嵐が吹き荒れた様に金剛以外の全員が壇上から引きずり降ろされるかの様に吹き飛ばされてノックアウト。
「金剛君!止めなさい!じゃないと!」
「じゃないと何だぁッ?!先公どもが!」
どうやら教師達も金剛を止める手段は無さそうだし。他の不良共もそこまでバカじゃないのだろう。奴の実力をそこまで感じると下手に手出しは出来ないし。
何より他の生徒が怯えてるじゃん。特に女の子達はさ。ヤレヤレ。あいつを止められそうなのは俺しかないか。
俺は地面に座り込み指先で体育館の床に触れる。
「ふぅ~。どうやら、ここには【気】が流れてるみたいだな。」
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