第二話 春の出会いは少しだけ楽しみ
風に吹かれて暖かさと淡く胸を踊らせる桜吹雪の中で歩き始める。
「あぁ!あの時の人っ!」
せっかくの雰囲気を1人の女の子がブチ壊すかのごとく後ろから声が聞こえたので振り返ると見た事がある1人の女の子を見付けた。てか、忘れるには難しい出会いをしたから忘れる筈がない。
「入試以来だよね!元気にしてた?」
「うん。」
初めて他人に声を掛けられたので緊張のあまり素っ気なく返してしまう。てか、あの笑顔に八重歯はマジで反則じゃね?結構身長高いモデル体型だな。
すると彼女は急に元気な笑顔からヨソヨソしく目は下を俯きながら頬を紅く染めながらモジモジとした態度で話し始める
「あと、貴方に謝らなくちゃいけないの。」
「なんで?」
てか、むしろ謝るのは俺の方なんだけどな。不可抗力とはいえ、年頃の女の子とキスしたあげくに胸をガッシリとこの右手で掴んでしまった事を……
この娘の胸は柔らかかったなぁ~……
「あの時ね……いっぱい貴方の血を吸っちゃってゴメンナサイ!!」
「え?血?」
彼女は勢いよく頭を下げてるけど。何の事だ?
血?え?俺って血吸われたの?いやいやいやいやそんな……WHY?
「あ、あの時ね。朝寝坊しちゃって……朝ご飯を食べてなくてね……それに急いでたら自転車のブレーキが効いてなくて……貴方にぶつかって……貴方を見てたら物凄い血が吸いたくなって……あの!ゴメンナサイ!」
頭を上げたと思ったら再び頭を空を切るかのような勢いで下げ始める。
言われてみれば……
なんか首筋にチクっと痛かったのは、あの娘が牙を俺の首筋に噛み付いて。立ち上がった後に目眩がしたのは血を吸われすぎたから貧血が起きたのか……
って事はアレかな?
「君ってヴァンパイア?」
「そうだよ。ヴァンパイアって言っても昼でも活動出来るヴァンパイア・ウォーカー(真祖)の火咲 絵里(ひざき えり)。よろしくね!貴方の名前は?」
「皇 一哉。よろしく。」
「よろしく!一哉!」
ヴァンパイア・ウォーカーの絵里は手を差し出す。
俺は、こんな風に他人から手を差し出された事がないから少し躊躇うと絵里は痺れを切らしたのか俺の左手を握る。
「仲良しになった友達の握手!」
「あぁ、うん。」
こんな風に手を差し伸べられたのが初めてな俺。彼女の手は今にも折れてしまいそうな細く。そして柔らかく暖かい手だった。
「でね!一哉の血って甘過ぎず脂っこくなくて!口当たりが良いのに、その中にスパイシーな味があってね!」
「そ、そうなんだ。」
「うん!私の好みの血だったよ!」
学校までの道のりを隣で一緒に歩いているが絵里の会話がなんか違和感でしかない。ヴァンパイアの特性なんだろうけど俺の血の話で盛り上がってる。血が美味しいって初めて言われたよ。
ぐぅぅうう……
絵里からお腹の虫が聞こえてきた。
「えへへ。朝ご飯食べたんだけどお腹すいちゃった。」
「腹減ったんだったら俺のサンドイッチあげるから食べなよ。」
俺は鞄から姉ちゃんの手作りのサンドイッチを渡そうとするけど絵里は上目遣いで何か物欲しそうな顔をしながら俺をジィーっと見つめる。
マジで上目遣い反則。
「一哉の、一哉の血が……良いな?ダメ?ダメ……かな……?」
「え?」
「私、好きになっちゃったみたい……一哉の血が……」
「……」
俺の血は餌か?
なんだよ。上目遣いされて見つめられて俺の心臓はドキドキして『好きになっちゃったみたい……』って言われた時は『コレって愛の告白じゃね?』って思った胸のトキメキを返せ。
もう泣きそうだよ。
するとエリは俺に顔を近づく。
「お、おい!」
「私の吸血方法はね。まず吸いたい人とキスしないと牙が出てこないの。だから……キスしよ。」
可愛らしい少女から、いきなり大人っぽく色っぽい小悪魔な声で『キスしよ。』と言われて俺まで顔が真っ赤になるのが分かるくらいに顔が熱い。
絵里は無理矢理に俺を抱きし寄せて俺と唇を合わせる。
2度目のキス。ほんの一瞬だったけど、それは何秒にも思えたくらいに長かった。そして顔を離して俺の手を取る絵里。
「今日は首じゃなくて、一哉の指から血を吸うね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます