第二話 春の出会いは少しだけ楽しみ
春。満開に咲いた桜の花びらがヒラヒラと散り始めた頃に俺は新しい制服に着替える。今日から俺は晴れて高校生となり私立 御伽学園の生徒となる。
だいたいの人が新しい学校と新しい人達との出会いに緊張感を持ちながらも楽しみにしているが俺はと言うと不安と面倒くささしかない。
俺は面倒くさがりのヤレヤレだぜっていうキャラじゃないが簡単に話せば、あの後の出来事だ。
【回想】
「いったい、どういう事ですか?この学校は!」
「いったい、どういう事ですか?って言われてもですねぇ。」
俺は何が何だか分からず受験の面接の場だとつい忘れてしまい珍しく声を荒げてしまう。それも、その筈だ。この御伽学園は『人ならず者、化け物や魔物の青少年が通う学校』で、その目的は『人間社会を学ぶ為の教育機関』だからだ。
「皇君。ビックリするのも無理は無いと思うが最近の魔界に住む最近の少年少女は人間社会に興味があってね。」
面接官Bが少し困りながら話し始める。最近の少年少女って……何だか最近の若者はみたいな言い回しをしながら面接官Bは話を続ける。
「ほら、人間社会は色んな物が溢れているだろう。まずは君が持つスマートフォン。指でタッチしてメールや電話にインターネットも繋げてアプリというのも手軽に使える。魔界じゃあ連絡手段なんて電波コウモリで話をするだけだし。」
電波コウモリ?電波コウモリって?何それ?美味しいの?
俺は訳が分からず口をポカーンと開けて話を聞いていると次に面接官Aが話し始める。
「ついでに言えばアニメやマンガ。コレはまさに人間社会の生み出した芸術。特に小さい女の子が変身して敵を倒すアニメは最高ですね。小学生は最高だぜって叫びたくなります。魔界では本は魔導書やら歴史本が殆ど。映像はニュースくらいしかありません。あぁ~ツルペタのツインテール最高……」
面接官Aは早口で尚且つ、まくし立てるような口調で自分がとんでもないロリコンだと言う事を自白するが最後に面接官Bが話す。
「つまり今時の魔界の少年少女は人間社会に興味があり、出来れば人間社会に住みたいが自分達は人ならず者。正体は隠せても、人間社会のルールを知らないと人間社会には溶け込めない。その為に御伽学園が作られたのだよ。君達が1期生になるんだがな。」
「今年からかよ!」
なんか色々と突っ込みたくなった受験だった。
「ふぅ~……今日から、あの学校に通うのか。」
制服を着替え終えて洗面所で寝癖を直しながらボリボリと頭を?きむしり今日から面倒な事が起こらなきゃ良いけどって祈りながら身だしなみの準備をする。
「カズ君。今日はちゃんと起きれたのねぇ。偉いわ。お姉ちゃんがイーコイーコしてあげる。」
「……そんな子供じゃないんだけど姉ちゃん。」
「あと、ごめんね。カズ君の高校の入学式なのにお姉ちゃん行けなくて……」
「大丈夫だよ。退魔の仕事なんでしょ?仕方ないよ。俺は大丈夫だから。」
姉ちゃんは今日は魔物封印の仕事が昨日になって急に入ったらしくて姉ちゃんじゃないと少し務まらなさそうな仕事出そうだ。俺は姉ちゃんに高校の制服姿を見せれただけでも充分だ。
だって、俺が行く高校ってホラ、あれだし?下手すれば姉ちゃんが学校毎を潰して生徒を始め先生達も倒しそうじゃん?だから好都合だったりする。
入学式には午前中に終わるみたいなので朝飯だけ食べて俺はピカピカの制服にピカピカの靴を履いて玄関を出て御伽学園から迎えに来るバス停まで足を運ぶ。
バス停まで歩いていると桜の花びらが散り、道路は桜の花びらで敷き詰められた薄いピンクの絨毯の様になっていた。
俺はきっと、これからも1人で学校生活を迎えるのだろう。周りが化け物や魔物と呼ばれる存在だとしても俺は打ち解けられないだろう。授業を聞いて、勉強してテストもそれなりに点数を取って、2年、3年と進級して卒業するんだろう。
誰とも話さず、周りから空気的な扱いをされて退屈で何もない灰色の世界がまた3年間やってくるだけ。
ただ、それだけだ……
俺はバス停に着いた頃にちょうど御伽学園行きのバスがやってきてドアが開いて乗ると、受験の時もそうだが俺1人だった。それに見覚えのあるバスの運転手も一緒にな。
「お兄さん。入学おめでとう。」
「……」
「相変わらず退屈そうな顔をしていますねぇ。でも、お兄さんが通う学校は退屈って言葉は存在しないと思いますよ。おっと、どうやら着いたそうですよ。」
俺はバスの運転手の独り言を聞き流していると、どうやら着いた様なので俺はバスから降りると受験でも通ったあの一本道は綺麗な桜並木だった。
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