プロローグ


「皇。本当にこの学校で良いんだな?」


「はい、この学校に決めました。」


次の日、俺は進路指導室で担任の先生に私立 御伽学園に受験する事を伝える。担任の先生はあんまり良い顔はしていない。一応、成績優秀の俺があんな怪しい高校を受験するんだからな。


「前にも言ったが皇の成績なら県内の難関高校も推薦で国立大学付属の高校も行けるんだぞ?それで良いんだな?」


「もう決めたことなんで変える気はないです。」


「そうか。もう何も言わない。私個人としては皇が自分の進路決めて嬉しいよ。頑張れよ。」


「はい。」


俺は担任の先生から成績表をもらい私立 御伽学園の受験手続きをして受験票を受け取り受験日に備える。



受験日の当日。


寝坊しないようにスマホのアラームで俺は起き上がり朝シャンをして目を覚ます。すると姉ちゃんが台所でフンフンと鼻歌を奏でながら料理を作っている。姉ちゃんのエプロン姿が様になってるな。


「あらカズ君。今日は受験日だから緊張してるかもしれないかもしれないけどリラックスしてね。あと、カズ君がお腹空いて受験に集中出来ないって事がないように、いっぱいお弁当作るから頑張ってね。」


「姉ちゃん。俺、今日は遠足に行くんじゃなくて受験に……って聞いてない。」


今の姉ちゃんに何を言っても無駄だと思うから取り敢えず自分の部屋に行って制服に着替える。そして鞄の中を確認して筆記用具、受験票、ハンカチ、ティッシュと諸々を確認して部屋を出て玄関に向かう。


「はい、カズ君。お弁当だよ。お姉ちゃん張り切りすぎちゃって沢山作っちゃた。てへ!」


てへ!じゃないよ無駄に可愛く舌を出すんじゃないよ。10代だから許されるんだよ。この年増がやる…ry…。


それに張り切り過ぎたレベルじゃないよ手提げ袋がやたら重いよ。遠足でもそんな作らないよ。まぁ全部食える自信があるけどさ。


「取り敢えず行ってくるよ。」


「行ってらっしゃい。」


俺は御伽学園から迎えにくる送迎バスのバス停まで歩き出す。取り敢えず。手提げ袋からオニギリを出して一口で食べる。


おにぎりを口に頬張りながらバス停に到着して間もなく御伽学園行きのバスがやって来て乗車するが中は俺と運転手だけというなんか不気味な絵だな。


「お兄さん。御伽学園に受験する学生さんかい?」


「えぇ、まぁ。」


「そうですかい。きっと日常が楽しくなると思いますよ。」


バスの運転手は胡散臭くニヒヒヒと笑うと御伽学園に向かうためにバスを走らせる。


胡散臭い学校に胡散臭いバスの運転手って、無事に高校生活を過ごせるのか少し不安になってくる俺だが気にせず姉ちゃん手作りのチリメン雑魚のおにぎり2つを一口で食べる。


バスに乗ること20分ほどでバスが止まると、どうやら御伽学園に着いた様子だから降りる瞬間にバスの運転手が一言。


「君のハイスクールライフ(高校生活)にホープ(希望)を」


そう言うとバスは走り去って行く。まるで今の俺が日々の日常に退屈しているかのように……


地図を辿ると御伽学園は歩いてさほど時間は掛らないみたいだし、今の道を真っ直ぐ行けば着くみたいだし俺は地図を鞄の中にしまい歩き始める。


それにしてもアレだよな。周りには畑やら田んぼやらで並木を囲うような一本道しかないから静かな感じだよな。俺ん家からそんな時間は掛からないみたいだし。


殺風景だけど嫌いじゃないな。この静けさは。


俺は絵だけでしか見たことない風景に少し感傷的になりながら歩いていると後ろから自転車が近づく音が聞こえてくる。


「ど、ど、ど、ど、どうしよぉ~っ!!自転車のブレーキが壊れちゃったよぉぉおお!!」


なんだか俺に嫌な予感がするから後ろを振り向くと勢い良く自転車が俺に近付いてくる。


ってか、俺の歩いてる所って下り坂だから……


下り坂で自転車のブレーキがぶっ壊れてる女の子……


「どいて!どいてぇ!」


自転車を乗った女の子は慌てた顔をしながら俺に叫ぶが思った以上に自転車の加速が早くて俺は避けきれず自転車とぶつかってしまう。


「きゃあっ!!」


女の子は自転車から宙を舞ってしまい自転車は地面に倒れ込んでしまう。俺は嫁入り前の娘に怪我があってはイケナイと思い反射神経で女の子をキャッチする。


だけど足場が悪く俺は畑に足を取られてしまい一緒に倒れ込んでしまう。


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