後編 骨接ぎ屋 悪鬼を斬る
昨夜、アレからオイラと万屋は宿で止まり一晩を過ごして翌朝、奉行所の圭史郎様に昨夜の事を事細かく伝える。
「って感じなんですが。」
「なるほどな。それにしても参ったな……」
「どうしたんですか?」
「いやな。昨日の下手人の事もあるが、それと同時に白牙組の1人が暗殺されたんだ。しかも芸者にな。」
「……」
「骸は白牙組の銀次。立場で言えば三下でも無ければ幹部でもない中堅の1人だ。奴は昨日、芸者を1人呼んで遊んで居たらしい。その姿を他の客や店の者からも確認されている。」
「そうですか。あと、ちょっと別件ですが。」
「どうした?」
「最近、白牙組の連中が理不尽に地上げをしているらしく、被害に遭った者が奉行所に行っても門前払いを喰らってると聞きまして……」
「なに?それは初耳だ。」
圭史郎様は眉を眉間にシワを寄せるところは、どうやら圭史郎様の知らない所で何か起きているようだ。
「圭史郎様は知らなかったのですか?」
「そうだな。分かった。この件は俺に預からせてくれ。すぐに調べる。」
「スイマセン。余計な仕事を。」
「気にするな。それが俺の仕事だ。」
「あと昨日、下手人の懐からこんな物が。」
オイラは昨日、下手人の懐から出てきた白い粉末が入った紙包みをスッと圭史郎様に渡す。
「これは?」
「少し中身を開けてみましたが白い粉が入ってまして……」
「もしや……少し器に水を貰ってきてくれないか?」
圭史郎様は何か見覚えのある様子でオイラは宿の人に頼み器に水を持ってきてもらう。
「まさかな……」
「どうしたのですか?」
「まぁ、見てろ。俺の思い過ごしだったら良いんだけどな。」
圭史郎様は額に汗を滲ませながら紙包みに入った白い粉を半分ほど入れ箸で水をかき混ぜる。
「「……っ?!」」
すると水がみるみる紅色に染まっていくのが分かる。
「やっぱりか……」
「何ですか?それは?」
「゙ヲチ水゙だ。」
「ヲチ水ってあの飲むと若返るって奴の水ですか?」
「いや、それは一般的に眉唾もの名前だ。しかしこれは阿片に近い禁忌な薬を取っでヲチ水゙だ。ヲチ水が出回り始めたのはここ、ひと月ほど……つまりあの下手人と期間が重なる。」
「妙ですね。白牙組が来る前はそんな事は起きなかったはず……」
「十蔵。余り勘繰るのは止めておこう。ここは俺に任せて後は俺の連絡を待っていてくれ。」
「了解しました。」
そして圭史郎様は立ち上がり下へと降りて早足で町の中へと消えていく。
するとオイラの腹の虫はどうやら文句を言っている様だから朝飯にしますかな。
「大将、あのクソ役人は帰ったか?」
「えぇ。いま帰りましたよ。腹も空きましたし朝飯でも食いましょうか。」
「良いねぇ!そんじゃ、うな重が良いねぇ!!」
「全く万屋さんは……」
万屋さんは相変わらず人にタカる上に朝からうな重とか……やれやれですな……
そして宿での御代を払い万屋さんのご希望通りのうな重をしかも飯は特盛を2つを頼み美味しく頂いてると、町中は白牙組の連中で溢れていた。
やっぱり組の者が暗殺されたとなれば顔に泥を塗られて面子が丸潰れですから、そりゃ探しますよね。
「聞いたぜ大将。昨日の騒ぎの事は白牙組の奴が芸者に暗殺されたみたいなんだぜ?」
「その様ですね。あちらこちらで白牙組の人達が芸者らしき人を片っ端から聞いて回ってますね。」
「何でも、その芸者は色っぽくて、二重瞼に三味線も出来て踊りも上手いとか。それに男を口説くのが絶妙らしいぜぇ。」
「何処から聞いたのですか?万屋さん。」
「まぁ……色々とな。」
「色々って……」
そんな風に雑談を交えながら朝飯を米粒1つも残さず完食し御代を払い店を後にする。
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