第33話 私たちは中間考査①
GWも過ぎ、テスト前に入った。
私にとっては高校初めてのテスト。自分が学年でどれくらいの位置にいるのかを初めて知ることになるテストだ。
「バカ兄、教えて。」
「ちょっと待ってくれ。この問題解けたら。」
「どーせその問題も時間かかるんやろ。先に教えて。」
「わーったわーった。」
今はバカ兄の部屋。いつもは桜さんが座っているところに私が座っている。桜さんは今日はきい姉に勉強を教えに行っていて、家にはいない。
今回のテスト範囲は等式の証明とか二項定理とか、あとはsin・cos・tan。ここで詰まったら絶対にダメだと分かっているからこそ、分からないところはバカ兄に教えてもらわないといけない。
んで、教えてもらいながら思うことだが、バカ兄は教え方が本当に上手い。ただ『これがこうなる』を教えるのではなくて、1つ1つ噛み砕いて教えてくれる。しかも、この式になる理由とか、考え方とか、そういうのも教えてくれて、本当に分かりやすい。どこでこんなスキルを身につけたんだろうか。
「バカ兄って教えるの上手いねんな。どっかで教えたりしてるん?」
「いや。きいと戸津井さんくらいしか教えてへん。でも、俺が出来んかった側やから、どこが出来てへんのか分かんねん。」
だからって、それを言葉にして教えるのは難しいはずだ。それを簡単にやっているバカ兄は本当に何者なんだろう。
バカ兄は私に教えたらまた自分の机に戻っていく。問題集に書き込まれたのはバカ兄の癖字で書かれたこの問題の解説…いや、考え方だ。答えの出し方だけを教えてくれたので、その考え方を他の問題でやってみたら意外にできる。そん感じでやっていくと、またぶつかるところがあるので、そこになったら教えてもらう。その繰り返しだ。
今日はクラブもなく早く帰ってきたはずなのに、次第に外は暗くなっていき、桜さんが帰ってきた。
「ただいま〜!あぁ〜!」
リビングから聞こえてくる桜さんのそんな叫び声。そしてソファーに倒れる音がして、私はバカ兄と目を合わせた。
「切り上げるか。」
「やな。」
私たちは解いていた問題集を閉じ、リビングに降りた。
リビングに広がっていたのは、うちの学校の生徒が見たら卒倒するような光景だ。ソファーに倒れ込んだ学校一の美少女がすやすやと眠っている。
「晩ご飯になったら起こしてやるか。」
「桜さんも疲れてるんやろ。寝かしてあげよ。」
私はブランケットを持ってきて、寝ている桜さんにかけた。
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