第32話 私たちはGW⑪

 ジュースを飲みながらローストビーフとかを食べる。みんな今日はそこまで遅くまでは残らないみたいだから晩ご飯には引っかからないようにする感じだ。


「みんなケーキ食えそう?」

「いつでもどーぞ。」

「私はちょいまち。」

「俺はいけるで。」

「私も。」

「私はちょっと休んだら。」

「私も音羽さんと同じです。」

「バカ兄が準備してる時間でみんないけるようになるんちゃう?」


私たちがそう言うと、バカ兄はやれやれとした表情をして「俺が準備するのは確定なんやな。」と言い、キッチンに向かっていった。


「そういや、みんな飲み物どーする?」


もう姿も見えなくなったバカ兄のそんな声が聞こえてくる。


「私コーヒー。」

「俺も。」

「もう全員コーヒーでええんちゃう?飲めへん人おる?」

『…………』

「おらんな。じゃあQ、全員コーヒー。」

「りょ。」


 しばらくするとお湯を沸かしている音が聞こえてくる。コーヒーのいい匂いもし始め、私の胸は高鳴る。


「はい、お待ちどうさん。とりあえずコーヒーと皿な。」


バカ兄が持ってきたタイミングでさくらさんが立ち上がり、カーテンを閉める。そしてまたバカ兄がキッチンに行くと、加太先輩が電気を消した。


 心安らぐ炎の匂い。16本立てられたロウソクに灯った炎がゆらゆらと揺れている。


「せーの!」

『ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデーディア杏♪ハッピバースデートゥーユー♪』


手拍子に合わせてみんなが歌う。私はロウソク目がけて息を吹き、炎を消した。


『おめでとう!』

「ありがとうございます。」


 部屋は明かりを取り戻し、桜さんはカーテンを開けた。真っ白いショートケーキが机の真ん中にあり、炎が消えたロウソクが立っている。


「じゃあ切ってこっか。7等分は難しいな。」

「8個でええやろ。切りやすいし。」

「やな。」


楓さんが包丁を持ち、ケーキを切り分けていく。そして切り分けたのを皿を持って受け取るのが加太先輩。夫婦の共同作業ってやつだな。


 そのあと、ケーキを食べながらプレゼント交換が始まった。


「私からはこれ。」


楓さんから貰ったのは化粧水。プール上がりは乾燥してるからめっちゃありがたい。


「次は俺やな。」


加太先輩からはヘアオイル。髪の毛が痛みやすいからだろう。2人はめちゃくちゃ水泳関連のものだ、


「私から…2人ほどのものではないけど。」


そう言いながら渡してくる音羽さんのはストレッチローラー。少し固めで凸凹しているいいやつだ。


「私からはこれ。」


真奈からは、ちょっと前から欲しいって言っていた筆箱だ。机の上に立てれるやつで、学校のあの小さい机の上でも邪魔にならない。


「じゃあ」「久志はラストやろ。杏ちゃん。私からはこれね。」


桜さんから貰ったのはタンブラー。これからの暑い時期に勉強中も冷えたものを飲める優れものだ。


「最後とかプレッシャーやばいねんけど。」

「大丈夫大丈夫。どうにかなるって。」

「桜のその言葉はどうにかなるって感じせぇへんねんな。」


そんな文句を言いながらバカ兄がプレゼントを渡してくる。開けると中に入っていたのはコースターだった。


「これ、珪藻土のやつ?」

「そそ。桜のタンブラーと一緒に使えるやろ。」


バカ兄らしい合理的なプレゼント。感動みたいなのはないがそういうのがバカ兄らしい。


「皆さんありがとうございます!本当に最高の誕生日です!」

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