第31話 私たちはGW⑩

 今度はインターホンも鳴らず、ガチャっと音がする。どうやらバカ兄たちが帰ってきたみたいだ。


「「「「「おかえり〜!」」」」」

「ん?俺たちが1番遅いんか。」

「久志が悩みすぎやねん。ごめんみんな。遅かった。」


2人は紙袋を持ってリビングに入ってくる。バカ兄のもう片方の手には、ちょうどホールのケーキが入りそうな箱が。私の予想は正しかったようだ。


 2人は手を洗ってからリビングに向かう。


「あっ、奏!適当に遊んどいてええで。」

「ええん?よっしゃ!今回もあれやろうぜ。」


テレビの画面には、毎度おなじみとなっているあのゲームのホーム画面が出てくる。


「今日は杏ちゃんが無双するんかな?」

「できるメンバーがそこまでおらんしな。」


今から遊ぶメンバーは私と楓さん、音羽さん、加太先輩、そして真奈。コントローラーの数はギリ足りるが、ぐちゃぐちゃになりそうだ。


 バカ兄たちはキッチンの方で何か用意をしている。おそらく、この後にあるパーティーの用意だろう。それにしてもまだ何も言ってこないって、2人は私に隠せているとでも思っているのだろうか。


 2時間ほどぶっ続けで遊んで、3時過ぎになった。


「お前ら〜、出来たから一旦ストップしろ〜!」

『えーい。』


バカ兄がそう声をかけて、私たちは一旦片付ける。試合の途中だったので、全員一気に落ちまくってゲームを終わらせた。


 その間にテーブルに並べられていく料理。ローストビーフだったり、生ハムだったり、ご飯ってよりはつまめるものに近いものばかりだ。もう少ししたら大会があるのを考慮してくれているのだろうか、揚げ物がない。このチョイスはおそらくバカ兄だ。


 椅子とソファーに分かれて座り、それぞれのグラスにオレンジジュースを注いでいく。疲労回復か。めちゃくちゃ考えられているメニューだ。


「ってことで杏も気づいてると思うけど、今日は杏の誕生日!ってことでカンパーイ!」

『カンパーイ!』


グラスを付き合わせて乾杯する。GWのあんな練習の後に待っている今日という日。去年とかはこんな感じでパーティーとかしてこなかったから嬉しい。


「あれ?そういえばきい姉は?」


グラスを持ち上げたまま、絶対いるはずの人が居ないことに気付く。どんなに高い熱が出ていようとも、這ってでも来そうな人の影がない。


「あぁ、きいは帰省中。今日のことを言ったら泣いて悔しがってたわ。」

「あーね。」


容易に想像できる姿に思わず笑ってしまう。


「皆さんありがとうございます。」


そんな中で今日集まってくれたみんなにお礼を言いながら、ローストビーフを食べた。

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