第30話 私たちはGW⑨

 うちの家に楓さんたちがやってきた。


「2人ともなんでここに?」

「Qからなんも聞いてないんか。なら俺たちから言うことでもないな。」

「せやな。」


靴を脱いで家に上がる2人。その手にはそれぞれ別の化粧品メーカーのロゴが描かれた紙袋があった。


 しばらくリビングで練習のこととか、フォームのこととか、先生の愚痴とかを話していると、またインターホンが鳴った。


「杏ちゃん、遊びに来たで。」

「音羽さん!お久しぶりです!」


やってきたのは音羽さん。黒のロングスカートにピンクのニット。首元にはネックレスが輝いていて、左手首にはピンクゴールドの腕時計が巻かれている。音羽さんの印象にぴったりな春らしい落ち着いたコーデだ。


 ちなみに加太先輩はデニムにオーバーサイズのベージュのパーカーとシンプルなコーデ。楓さんは黒のロングスカートに白い薄手のトレーナー。ところどころに黒いリボンがあしらわれていて、楓さんの可愛さが出ている。


 音羽さんは今日は新宮先輩とは一緒じゃないようだ。


「カレンは今日は向こう行ってるから学校でお土産渡すってさ。」

「イタリア土産楽しみ〜!」


このGWを使って里帰りか。久しくしていないなぁ。


 すると、また来客だ。インターホンが鳴って、私はまた玄関に向かう。そしてドアを開けるといたのは真奈だった。


「杏、おー。今日はちゃんとしてるねぇ。」

「私もやるときはやるんよ。それより、なんで私の家にこんなにあつまってんのよ。」


結局誰も説明してくれないので、今来た真奈に説明を求める。


「ん?由良先輩からなんも言われてないん?ほんなら私も言わんとこ。」

「まーなー?」

「そんな顔しても言いませーん!」


結局真奈も何も教えてくれない。真奈は今日はスキニーデニムに白いTシャツ。その上から薄い青のカーディガンを羽織っている。


 後から来た2人もそれぞれ袋を持っていて、メンバー的に私に関係することだと分かった。でも、それが何かが分からない。別にここ最近何かしたわけでもないし、何もお祝いされることはないはず…お祝い…5月6日……


 そういうことか。


「その顔は答えが出たみたいやな。」

「まあね。答えは私の誕生日やろ?完全に忘れてたわ。」


5月6日。ちょうど16年前に私は産まれた。そのことをお祝いする日だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る