第29話 私たちはGW⑧

 GWの練習はあっという間に3日間の日程を終え、今日はOFFだ。


「おはよぉー…」

「………」

「………」


リビングに降りているであろう2人に言ったものの返事がない。リビングの電気も消えていて、人の気配が全くない。


「2人ともどこ行ったんやろ。」


今日は5月6日。カレンダーの数字のところには丸がされているが、その横には何も書いていない。


「なんの日やったっけ?」


2人が付き合い始めた日は年末だから〇周年とかではない。その他に記念日的なことがあるとするならば…


「全くわからん。とりあえず朝ご飯食べよ。」


時間は10時過ぎ。朝と言うほど朝ではないが、お腹もだいぶ減ってきたし、昼までもつような何かを食べよう。


 食器棚から器を出して、グラノーラを入れる。果物もごろごろ入っているやつだ。そこに冷蔵庫から出した冷たい牛乳を注いだら、簡単に栄養補給ができる朝ご飯の完成だ。


「いただきます。」


テレビをつけて、適当にチャンネルを回して、それをぼーっと見ながら食べ進める。


 それにしても2人はどこに行ったのだろうか。書き置きもなくどこかに行くなんて、あの2人にはなかなかない。たぶん忘れてただけなんだろうけど、それなら私に連絡してるはずだ。でも、その連絡すらない。


 そのまま、まるで抜け殻のように過ごすこと2時間ほど。朝ご飯が少なめだったからか、お腹が減ってきた。


「何も作りたくない。」


私は1度キッチンに立つが、すぐにやる気がなくなってしまった。結局カップうどんを作ることにして、お湯だけ沸かした。


 食べるのは最近出た北海道の味のやつ。出汁に利尻昆布と鰹節を使っている、巷では評判のやつだ。


「5、4、3、2、1!」


時計を見ながら5分経つのを待ち、蓋を剥がして食べ始める。


「いただきます。」


うどんを啜ってみると、評判になるわけが分かった。出汁が美味しすぎる。辛すぎもせず、昆布がきいていて深い。素材がいいのもあるだろうけど、何よりメーカーの本気を感じる。


 このシリーズは東西南北それぞれの味があるらしい。1度試してみるのもアリだな。


 なんて考えているうちに、インターホンが鳴った。バカ兄が何かを注文していたのかなって思いつつも、「はーい」と返事する。するとスピーカーから『nairuでーす』と聞こえてきた。知らない人の声だったし、おそらく配達員だろう。そう思ってドアを開けるとよく知っている2人がいた。


「おはよ、杏ちゃん。」

「あれ?Qはおらんのか?」

「加太先輩!?楓さん!?」

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