第26話 私たちはGW⑤

 走ってから始まった水中練習。これ以上ない晴天の下、私たちは泳ぎ始めた。


「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」

「うひょー!」

「冷たっ!」


水に入る度、そんな先輩たちの叫び声が上がる。そんなに冷たいのかと入ってみたが、まだそこまでだ。恐らく、私が慣れているからだろう。外プールでずっと練習してきたから多少の冷たさはなんとかなるみたいだ。


 アップ、キック、プルと練習が続き、1度休憩が設けられた。


「寒い寒い寒い寒い!藍、寝ころべ!生き返るぞ!」

「ん?ほんまや!あったかぁ。」


加太先輩と藍先輩がプールサイドに寝転がって、打ち上げられた魚のようにプルプルしている。そんな姿を常翼学園の先生が笑いながら見ていて、その横で江住先生も笑っている。


「そろそろメイン始めるで。暖まってる奴らは水ん中入れ。」

「嫌です!」

「無理です!」


寒さでくたばっている2人が全力で拒否している。同じようにプールサイドで寝転んでいる数人も動く気がなさそうだ。


「んー、じゃあみんなやばそうなので6セットに減らします!やからせめて入って頑張ってくれ。」

『えーい。』


メインのセット数が半分に減って、部員のやる気が出てきた。6セットだからだいたい30分くらい水の中にいたらいいだけ。慣れたものだ。


 そして始まったメイン。ハードばっかりだが、その中でタイムをキープしないといけない。しんどいことはしんどいが、慣れが一番の武器になるメインだ。


 そんなメインも気づいたら終わっていて、また打ち上げられた魚タイムが始まった。


「あったかぁ。やばい動かれへん。」

「まずはうつ伏せで…そこから仰向けになったら…はぁ。」

「ダウンもういいかな?行かんでいいよな?」

「もうあの地獄には帰りたくない。」


身体をプルプルと震わせながら日光浴をしている男子たち。女子たちは寒さに慣れているからか、ダウンを泳ぎ始めた。私もそんなに寒いとは感じないのでダウンを泳ぐとしよう。


 私がダウンを終わらせてもまだ日光浴をしている。絶対焼けると分かっていながらもこの暖かさには敵わないらしい。


「瞬、生きてるか?」

「やばい。寒すぎる。もう入りたくない。」

「加太先輩、あったまったからってダウン行こうとしてるで。」

「あの人はヤバいから。とりあえずジャージ着とくわ。」


瞬は起き上がってジャージを取りに、荷物を置いているテントの方に歩いていった。


「憲士は…元気そうやな。」

「そう言う由良こそめっちゃ元気やん。」

「まぁ、慣れてるから。」

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