第22話 私たちはGW①

 突然ですがお願いです。私たちにGWをください。


「なんちゅうナレーション当ててんねん。」

「だって〜」


GW中のoffは1回。しかも他の日はだいたいニ部練やし、数日間は学校にも行かないといけない。鬼だ。鬼。私たちに休みを提供してくれ学校側!


 そんなこんなでGW直前に突入した私たちはある現実に直面していた。


「なあなあ、なんか練習キツなっていってへん?」

「やっと気づいた。ちょっと前からたまに狂ってるメニュー入ってきてんで。」


練習前のプールサイド。もうシート上げをすることもなくなって、道具を用意してからビート板の上に座り、真奈と駄弁る。


「まぁ、うちの学年も水泳部多くなってきたからいいんやけど。」

「せやな。同じ苦しさを味わうのが増えたのはいいことや。」


真奈は笑いながらそんなことを言う。


 うちの学年の水泳部は私たちを含めて9人。私と真奈、専門が平泳ぎの小野海琴と古橋史帆。ここまでが女子で男子が自由形短距離専門の秋山冬吾、バタフライ専門の藤岡蒼介、平泳ぎ専門の矢巾瞬、背泳ぎ専門の大浜彪牙、そして長距離専門の…


「憲士!遅いやん。今日掃除当番やったっけ?」

「ちゃうちゃう。練習後食うもん買っとってん。」


日高川憲士。私の隣の席のやつだ。隣の席なのもあって、私たちはよく喋るようになり、1ヶ月も経たないうちに仲良くなった。練習でもお互いにDistanceで泳いでいるのもあってよく喋るのだ。


「またふたりやってる。」

「なんやミコ。普通に喋っとっただけやけどなんかあったか?」

「なんもないなんもない。なっ、しほ。」

「あんたは早めにその喋り方直しーさ。緊張感の欠片もない。」

「えーめんどくさいー。」


ミコと史帆は中学からの内部生で、楓さんとも仲良かったようだ。2人とも入って来てすぐに『ちゃん』付けで呼んでいた。


「それに比べて杏ってまだ緊張してるやろ?」

「ふぇっ?」

「やって中学ん時はそんな喋り方ちゃうかったもん。」

「そうやったっけな?全く覚えてへん。」


真奈は私の喋り方がまだ硬いと言う。私としてはそこそこ慣れてきたかなって感じやねんけど。


「でも、日高川くんと喋るときだけは戻ってるで。」

「うおぉぉぉ!」

「冷やかすなアホ!」


すっかり1年のいじられキャラになってしまった私。まぁ、受け入れてるところもあるけど。


「体操!」


気づけば時間は体操が始まる時間。私が入ってきた頃はマネージャーをしていた龍神夢先輩が体操の号令をかける。夢って名前だけど、ちゃんと男子だ。


 人数も増えてきて、本格的にリレーを組めるようになった水泳部。夏のシーズンもこんな感じの雰囲気のままやるんなら、本当に楽しめそうだ。

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