第23話 私たちはGW②

 GW前最後の学校。クラスの中は重たい空気で満たされていた。


「課題やって。」

「そりゃあちょっと長い休みやねんしあるやろ。」


半分絶望気味にため息をつく私の横で憲士が笑う。どこからどう見ても余裕そうだ。


 GWに出された課題。それは数学の問題集の15ページ分だ。問題数にしてだいたい80問くらい。でも基礎レベルからなので出来ないことはない。難しい問題も時間をかけたらできるものばかりだ。


「それでもなぁ。憲士、GWの予定見たやろ。」

「見たで。ニ部練ばっかやったな。」

「そーやろ!そんなんで出来るわけないやん!」


机をバンと叩き、憲士に訴える。ニ部練が終わってから家に帰るとして、家に着くのが5時半から6時。そこからお風呂入ったりご飯食べたりケアしたりしたらだいたい9時ぐらいになってしまっている。その時間から勉強…案外出来んこともないかも。


「2人ともどーしたん?」


私より少し遅く学校についた真奈がこっちに来ながらそう言う。


「杏のやつが課題がどーのこーのって言ってんねん。別に終わらん量でもないのに。」

「ニ部練の日の夜なんか起きてられるわけないやん。」


一旦できるできない問題は置いといて、クラブの話に持ち込もうとする。けど、そんな空気は憲士が壊してきた。


「課題は授業で習ったその日に進めていってるから、俺はほぼやるところないで。」

「へ?」


憲士はカバンの中から数学の問題集を取り出して、私に見せてくる。真っ白だったページは問題を解いた途中式で埋め尽くされていて、図も使っていてわかりやすい。


「問題集が分かりやすいってすごいな。私なんて自分さえ分かればいいって思ってんで。」

「中学の頃からこうやって渡すこと多かったから癖づいてんねんな。」


真奈が褒めるのを恥ずかしそうに聞く憲士。それでもどこか嬉しそうだ。


「ちょっと貸してもらっていい?授業で分からんとこあってんな。」

「別にええけど、クラブ終わってからやったらいくらでも教えるで。ここに書いてへんことも結構あるし、授業ノートあった方が杏も分かりやすいやろ。」

「やったー!ありがとう!」


 クラブ後に勉強を教えてもらう約束をして、私は教材を出しにロッカーに行く。


「あの〜、日高川くん、私もいいかな?」

「ん?木美野さんも?別にいいけど、木美野さんは問題ないんちゃうん?」

「えーっと、そのー、なんて言うか…」

「あ〜、杏と一緒に帰りたいんか。いいよ。」

「そんなんちゃうから!普通に私も分からんとこあったからやから!」


背後でそんな会話をしているのを笑いながら聴きながら。

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