第21話 俺たちは京都⑦
お参りをしておみくじを引いたあと、鴨川大橋の下に戻る。時間は2時前。ちょうどいい時間だ。
「戻りました〜!」
「おう、お疲れ様。課題はクリア出来たか?」
「はい。ちゃんと写真撮ってきました。」
清水寺の入場券を見せながらそんなことを言う。
「じゃあ課題も早めに終わらせとけよ。」
『はーい!』
先生に挨拶をしてからその場を立ち去る。
「今からどっか行く?」
「私もう疲れたから帰って寝たい。」
「私は物理の課題。」
「俺は家帰って晩御飯作らんと。」
聡はこのあとどっか行くのを提案してくれたが、3人ともパス。俺も膝のサポーターがなかったら今頃膝の激痛で死にかけていたんだろうなと思いながら、スマホの歩数計のアプリを開く。
「うわぁ。」
「どしたん?」
俺の横から船戸さんがスマホを覗き込む。そこに表示されているのは『20328歩』の文字。歩いた距離は17kmを超えていて、間違いなく過去最高だ。
祇園四条の駅の中で軽く飲み物を買い足して、トイレに行ってと電車が来るまで待っていると、改札を通る桜たちと目が合った。
(後でね)
(りょーかい)
そう口パクで言葉を交わして、桜たちが階段を降りていくのを見る。
「ん?どしたん?」
「いや、何にも。俺たちももうそろそろホーム降りとこうぜ。もうすぐ来るみたいやし。」
女子2人は先にホームに降りてる。今この階にいるのは俺たちだけで、うちの学校の生徒もいない。
階段を降りながら聡が急に笑い始める。
「どした急に?」
「いや、去年初めて喋った頃はこんな感じになるなんて思ってなかったなと思って。この京都も冴那と回ってたやろうし、俺たちって性格真逆やん。やからあんま関わってなかったやろうなって思って。」
「確かに。あんなことがなかったら聡とこうやって喋ることは無かったと思うわ。」
俺たちは真逆の性格をしている。いや、性格ってより、生きてる世界が違う。聡が陽で俺が陰。陰と太陽は常に隣り合わせだけれど、絶対に混ざることはない。
だからこうやって仲良くできてるってこともあるだろう。お互いが遠慮こそしないが、踏み込んではいけない所を避けて喋っている。
「そうやって考えたら久志と有田さんも真逆よな?」
「正確には『やった』な。俺が引きずり下ろしたから。」
「間違いない。」
ゆっくりと1段ずつ階段を降りながら喋る。階段を降りてすぐのところに2人はいた。
「遅ーい!」
「もうすぐ電車来るで〜。」
見れば『Train Arriving』の文字。俺たちの旅も終わるのかと少し寂しくなりつつ、電車に乗りこんだ。
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