第30話 DAY24
「なあなあ音羽ちゃん、ちょっと休憩にせんか?」
「アァン?誰に物言っとんじゃ我ぃ?」
まったく、カレンは何でこんなにやる気がないんだろうか。せっかく、料理教えてあげるって言ってるのに。ったく。いいけど。
「最近思い始めたんだよな。俺が料理出来なくても、隣の音羽ちゃんに作ってもらえばいいんちゃうって。」
「ほう。ハァ?」
「だって、音羽ちゃんの料理美味しいんだもん。」
「だから毎日でも食べたいと。」
「そゆこと。」
「ふーん。ちょっと外の空気吸ってくるわ。」
「ん?行ってらっしゃい?」
私はベランダに出て、カレンから見えない位置でうずくまる。
「あ〜なんでそんな恥ずいことスラスラ言えちゃうんよ。私の料理毎日食べたいとかほぼプロポーズやん。しかも無自覚とかマジで何なん?こっちばっかり意識してるみたいでなんかムカつく。あーもう。この夏休み入ってからずっとそうよ。最近はアイツとずっと一緒にいるし、私も別に居心地悪いことはないけど。こんなの、私が変みたいじゃない!」
聞こえないように、早口で文句を言い続ける。少ししてやっと冷静になれたので、私は部屋の中に戻っていった。
「結構長かったけど大丈夫?」
「だ、大丈夫よ。」
ダメだ。こいつの顔を見ると冷静になれない。
「顔赤いで。熱あるん?」
そういえばさっきから視界がぼーっとするような。ふわっと体が浮いた感覚があって、記憶が途切れた。
目が覚めると私は布団の上にいた。おでこには冷感シートが貼ってある。
「音羽ちゃん起きたん?良かったぁ、急に倒れるからめっちゃびっくりしたわ。」
「そう、ありがとね。」
私は体を起こそうとする。カレンは私の両肩を掴んで、押し返した。
「ダメ。今は病人。今日は看病したげるから。」
「ごめんね。迷惑かけて。」
「それはこっちのセリフだよ。この夏休み中ずっと自分に付きっきりやったから倒れたんやないの?」
「そうなのかな?分かんないや。」
ダメだ。頭が全然動かない。このままだと、変なこと口走っちゃいそうだから、注意しなくちゃ。
「私としてはカレンがいてくれるから、寂しくないし、毎日楽しいよ。」
「えっ?」
あれっ?何言ってんだろ、私。
「だから、さっきの話受けたげる。」
「さっきのって、まさか。」
「そう。カレンの分までご飯作ってあげる。お弁当は自分で買うなりしてね。あと食材は割り勘ね。」
あっ、言っちゃった。さすがに引かれてる、よね?
「あ、ありがとう。嬉しいよ。じゃあ、何か食べようか?果物くらいだったら簡単なやつだったら切れるから何か欲しいのある?」
「じゃあ、バナナお願い。」
「分かった。ちょっと待ってて。」
彼のその声だけを残して、私はまた夢の中へ潜って行った。
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