第15話 ドレミのかいだんというパズルを完成させる1つのピースが、シド先生だったんじゃないか?と、思ったら、先生は…。大人は、無責任です。

 何かが、子ども心に、引っかかった。

 「シドせんせい…。シド…」

 ああ!

 どうして、こんなに簡単なことに、気付けなかったんだろう?

 シド…。

 シド…。

 奇跡だ。

 シド先生は、ドレミのかいだんというパズルを完成させる1つのピースなんじゃないか?

 ドレミ…ファ、ソ、ラ、シ、ド…。

 シド先生は、次の週も、彼女の家に、見まいにきてくれた。

 「…先生?どうぞ」

 母親は、母親のほうから買ってきた、新しいチーズケーキを、ふるまった。

 「せんせい?おいしいね!」

 「ああ」

 チーズケーキを食べて、彼女の身体は、大きくなった。

 体重も、増えた。

 彼女は、元気になってきたのだ。

 「たいじゅうけいさん、ありがとう」

 シド先生とのシーソーゲームが、続く。ドレミが、太れば太るほど、シド先生は、細くなっていった。

 「ねえ、せんせい?」

 「ああ…」

 「せんせいって、小さくなってない?」

 「ああ…」

 それが、最後の言葉に、なってしまった。

 大人は、いつだって、子どもを置いて、消えていくんだ。

 「子どもは、無責任だ」

 違うよ。

 大人だって…。無責任だよ。

 彼女が顔を向けたときには、もう、シド先生の姿は、なかった。 

 母親が、2階にある彼女に部屋に、やってきた。

 「ちょっと、ドレミ?」

 「…」

 「先生は?先生は、どこに、いっちゃったの?」

 「わからないよ」

 「わからない?」

 すると、机の上に置いた、角煮の置物が、彼女に、何かを語りかけようとしてきた気がした。






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