第13話 小学生の世界は、ふしぎ。わたしのからだがやせると、クラスのせんせいのからだが、ふとっていく。これって、シーソーゲームの魔法? 

「他人のことを、気遣う」

 子どもは、無意識に、やっているのかもね。

 「ドレミちゃん、バイバイ!」

 小学生って、強い。

 友達が帰っていくと、彼女のお腹が、すいてきた。

 が、母親に何を出されても、のどを、通りそうになかった。豚の角煮を出されても、食べられそうになかった。

 「こまっちゃったなあ」

それからも、数日間、学校にはいけなかった。

 足首などのほか、ほおも細り、口全体の肉が、誰かに持っていかれてしまうような感覚を味わった。

 毎日、部屋の机の上に置いた2つの置物を見ては、気持ちを、落ち着けるしかなかった。

 豚の角煮をかたどった置物に、白菜の置物をかたどった置物。

 どちらも、レプリカの、アート作品。

 台湾に海外出張にいっていた父親が、土産に、買ってきてくれた物で、すぐに、気に入った。

 それを眺めていると、不思議なことが、起こった。

 「…気分は、どうですか?」

 シドという名の、あごひげに白い物が混じりはじめた、クラス担任の男性が、見まいにやってきてくれたのだ。

 銀縁の眼鏡をかけていて、太りぎみの、シド先生。

 「シドせんせいって、ぶたのかくにみたい…ふとっててさ」

 アッと、なった。

 「わたしのからはやせて、シドせんせいのからだは、ふとった。これって、シーソーゲームっていうんじゃないの?」

 小学生の世界は、不思議な感覚だらけ。 

 「今日は、これを、もってきたんだよ?」

 「え?」

 大人は、なんて物を、持ってくるんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る