第12話 「小学生女子は、無邪気だね」 でも、子どもは、他人のことを考えないから無邪気に見えるわけじゃありません。

 「ねえ、ドレミ?ドレミのかいだんを上るように、ゆっくり、ステップを踏んで良くなっていけば、良いんじゃない?」

 「え?」

 不思議なことを、言われた。

 小学校には、ドレミのかいだんっていうものが、あるんだそうな。学校の怪談?学校の階段?どっちなんだろう?

 ちょっと、バカバカしかったけれど、良い子を、演じてみた。

 「ありがとう、おかあさん?」

 大人を、安心させてやらなくっちゃならない。こうやって、コントロールできるようにならないと、大人な女子には、なれません。

 母親の言葉は、謎に、満ちていた。

 「ドレミファソラシドのメロディがすべてそろうと、良いことが、あるんだよ?」

 ソノミちゃんを含め友達数人が、翌日も、見舞いにきてくれた。

 「こんにちは」

 ソノミちゃんが、皆の代表で、あいさつ。

 「あら?今日も、こんにちは」

 「おじゃましまあす」

 「おじゃましまあす」

 彼女の寝ていた2階が、にぎやかに、なってきた。

 「…ドレミちゃん?」

 「からだのちょうし、どう?」

 「ありがとう…」

 結局、この疑問は、最後まで聞けなかったけど。 

 「どうして、熱が出ちゃったのか?」

 そんなの、聞けなかった。

 友達に、迷惑をかけたくなかったから。学校のかいだんについても、聞けなかった。笑われちゃうだけかも、しれないから。

 「小学生女子は、無邪気だね」

 大人は、言う。

 そう言ってくれるのは、かまわない。でも、他人のことを考えていないから無邪気というわけじゃない。

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