『逃げる』しかねぇ!

@rimauchi420

一日目:素楼 エミ

「天馬先輩!よかったら付き合って下さい!」

今目の前にいるのは同じ部活の1個下の後輩、素楼 エミ(すろう えみ)。

よく、僕に懐いてきてくれたのでかわいがっていた後輩だ。まさか、告白されるとは思っていなかった。

そんな彼女には真摯に向き合って告白の答えを伝えなければならない。そして頭の中に選択肢を思い浮かべた。

【逃げる】【逃げる】【逃げる】

ふぅ、またこの選択肢だけか。


突然だが僕、韋駄 天馬(いだ てんま)はギャルゲーの主人公である。ギャルゲーの主人公といえば女性との重要なシーンに選択肢がいくつか思いつく。その選択肢のどれかを選ぶことによって仲が進展したり、逆に好感度が落ちてしまったりする。

もちろん僕にも選択肢が頭に浮かび上がる。しかし、その選択肢は全て【逃げる】なのだ。

仕方ない。選択肢は絶対なのだ。僕は一番上の逃げるを選択した。

私はこちらをじっとみている彼女に背を向け、一目散に走り出した。

「え!?ちょ、ちょっと!待ってくださいよ!!」

彼女は驚愕しつつも走って追いかけてきた。

もちろん、僕は逃げ続ける。

(なんだかボタンを連打したらより早く走れる気がする…!!)


「も、もぉ、なんなのよ~!!」

どうやら逃げきれたみたいだ。後ろにはもう彼女の姿はなかった。なんだか申し訳ないことをしてしまったな。可愛がっていた相手に向き合わずこういう結果になってしまって後悔が残る。これも選択肢のせいだ。しかし、どうしたらいいんだ。考えながら帰路に着いた。結局解決法を思い付くことはなかった。

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