第27話
お兄様・・・これは・・・。
フレディお兄様を見るとニヤニヤとしています。ああ、これはカインお兄様きめられましたか?
「エルローズ様は一人っ子でらっしゃると聞きました。」
「は、はい・・・私がその・・・家を継ぐと・・・。」
「決まっていると?」
「あ、あの・・・まだそう決まったとは・・・。」
ああ、エルローズ様押されています。ああこのままでは・・・。
「解りました。エルローズ様、お父様とダンスを踊られるのですよね。その後に私と踊っていただいても?お父様のところまで迎えに行きます。」
「は、はい。」
あああああ・・・・エルローズ様ぁ・・・。
うなずかれてしまいましたわね。言質を取られてしまいましたわね?
確定です。カインお兄様はとうとう決められたのですね。
それにしてもこんな唐突に恋に落ちてしまうとは・・・エルロッドウェイの令嬢方に少しだけ同情いたします。ああ、こんなことになろうとは・・・。
フレディお兄様はニコっと笑ってエルローズ様に言いました。
「では私も弟と共にご挨拶に参りましょう。」
あ。フレディお兄様も乗ってしまわれました。
ああ・・・。
エルローズ様。諦めてくださいませ。カインお兄様は一度気にいると大変なのでございます。
わたくし然り。わたくし然り。わたくし然り・・・。
これからは同志として語り合えると思われます。心のなかではもうお義姉さまと呼ばせていただこうと思います・・・。
遠い目で見守るわたくしと目があったカインお兄様はにっこりとこれ以上ないほどにご機嫌に笑ってらっしゃいます。はい解りました。まだバラしませんのでご安心くださいませ。
軽くうなずくわたくしをみてまたいい顔で笑ってらっしゃいます。
ああ・・・。
そうこうしている間に陛下がご挨拶されるようです。
皆さま礼をとった姿勢をしていらっしゃいますので、玉座に着かれたのでしょう。
それにしても立ち姿もお美しい方でいらっしゃいますわね。顔色は今日は良いようですわね。先程の手も暖かかったから・・・あとは少しだけ心配なのが目の下の薄い隈なんですがそれが寝不足なのか咳による呼吸の不調からのものなのかは・・・
パチパチパチパチという拍手が響き渡っています。
あ、ちゃんと聞いておりませんでした。
ん?
周りの方たちの視線が・・・・視線・・・・・。
陛下が、玉座からおりてますわね・・・ちか・・・づいてきましたわね?
え?わたくし確かにファーストダンスを踊ることにはなっておりましたがこんな公の場でお出迎えを?いやちょっとおまちくださいませ、だから目立つ!やめてくださいませ!!!
あああああ・・・・。
お兄様たちはかたまってらっしゃる。
国交のこともありますからどうにもできませんわよね、お兄様たちも拒否はされませんもの。
わたくしも先程踊るとお約束いたしましたし、頑張れわたくしの丹田!!力を入れて!!
礼を取ろうとカーテシーをするその寸暇。
陛下のお顔を見る。
穏やかな口元、歩くたびにサラリと揺れるミルクティー色の髪。
薄い体だけど広い肩幅、長い手足。
華美ではないけれど美しい黒の衣装に控えめに銀の糸の刺繍。なにげにわたくしの髪の色では?とおもったけれど見ないふりをしたい。
長い歩幅、優美な足運び。
同じ王族だけど違う。
こんなに美しい人がいるのだと。
わたくしは初めてきちんと陛下のお顔とお姿を見た気がしました。
いつまでもこの時を忘れない予感もしたのはきっとわたくしが背負っている神託のせい。
陛下とともに背負っている神託のせいだと。
一番深いカーテシーをしながら、最上級の礼を取りながら。
わたくしはあらためて自分の責任の重さを知り・・・・。
こんなに煌めく人がいるのだと思い知った瞬間でございました。
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