「この服、おばさん臭くね?」
ひるなかの
☆
私は流行が大嫌いだ。
どうしてみんなと同じものを着ないといけないのか。
服は自分の個性を出すために着飾る物なのにどうして個性を押しころさないといけないのか。
それはずっと思っていることだ。
「この服めっちゃおばさん臭くね?」
だから買い物中、友人が笑いながら吐き捨てるように言われた、その服のことが忘れられなかった。
落ち葉のような暗く深い茶色。暗い色と対抗するように華やかに咲かすピンクの花々のプリント。
気に入った。
私は友人に隠れながらそのトップスを購入した。
それから私は家でも外出する時でもその服を着るようになった。
私の昔からの性で一度気に入るととことんのめりこんでしまうのだ。
周りから「おばさん臭い」とか散々言われたが、気にしなかった。
これは私の個性だ。
おばさん臭いということは裏を返せば『成熟した大人』ということだろう。
必死に流行なんか追いかけている者よりもずっと大人ってことじゃないか。
私はむしろ誇らしく思いながらずっとそのトップスを着こんでいた。
それからしばらくして喉が痛くなるようになった。
風邪なのだろうかと思い、風邪薬を飲み始めたが一向に良くなる気配がしない。
のど飴をなめる習慣をつけても駄目だった。
むしろ悪化して声がしわがれてしまった。
そして時が過ぎるごとになぜだか枯れた草のような匂いとそばかすのような汚れがつき、今までよりも乾燥しやすい肌になってしまった。
何を施しても全然直らない。
どうしてこんなことになってしまったんだろうか。
私は何か病気にでもかかってしまったんだろうか。
私は悶々として日々を過ごしていた。
ある日、ショッピングモールでたまたますれ違った、父の手を引いていた男の子の言葉が耳に届いた。
「あの服、おばあちゃんみたい」
「この服、おばさん臭くね?」 ひるなかの @hirunakan0
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