決勝
ゆきむら
第1話 決勝
「2組目の人、レーンに入って」
張り詰めた顔を浮かべ、
同じ組の人たちがレーンに入る中
僕には、漠然とした不安が無かった。
ただ、
なんとも言えない高揚感と
熱くなるものが 僕の中にあった。
レーンに入り、辺りを見渡す。
観客席からの声援
風の音
タータントラックの匂い
一年前と、何も変わらない。
全てを奪われ、絶望したあの時と。
レーンナンバーは、その時と変わらない
「4レーン」
「 ON Your Mark 」
徐に歩き出し
スタートラインに、僕は立った。
そして
スターティングブロックのペダルに
足を乗せて
ふるえる手を、スターㇳラインに置いた。
あれだけ会場中に響き渡っていた
観客席からの声援が、
一瞬にして消える。
心臓の鼓動が、耳から抜けていく。
「Set‥‥‥パァン」
100m先の僕は、笑っていた。
決勝 ゆきむら @kimurayuuki
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