第10話
女は奥側に座り、僕はドア側に座った。
ヲイヲイヲイヲイ、上座下座もしらんのかこの女は。社会人やったのは嘘か?!
店員が僕の服装が変わっているのを察したのか、にこっと笑いながら水の入ったグラスを置いた。
「それでは当店の説明をさせていただきます。申し訳ございませんが、当店チャイティーラテのみお作りしております。お好みに合うように今から茶葉の選択、抽出等致します。その際の会話はお二人の今後のこと、もしくは思い出話をしていて下さい。そのお話を聞きながら色々作ります。」
「へぇ、なんか変わってますね。」
「まあ、僕の趣味と思ってください。」
またにこっと笑いかけてカウンターへ下がって行った。女性だったら「かっこいいわぁ!」とか思う分類だろうし、そういうコンセプトもなかなかないからウケは良いのだろう。
で、この女はそんな事はお構い無しにケータイで何か打ち込んでる。
「センセ、ほら、店員さんが会話をって言ってましたよ!」
「ちょっと待って。」
...んだよこいつ。ほんと腹立つわーーーーーーーーーーーーー。
まじで担当降りよう。
「で、話す内容なんかあるの?」
「...ねえよ。」
「...え?」
「ないって言ってるだろ!!!あんたと話すことなんてないよ!!!全部俺じゃないか!!!振り回されてるの!!!」
彼女はいつもイライラしているような顔をしているのに、今は呆然と無表情で俺を見ている。
「この喫茶店も、服も、原稿の期限も!!!全部あんたに合わせて、センセセンセって呼んでやってるのに!!!」
彼女の口が一瞬開きかけたが、ゆっくり閉じた。
「全然!!!何もしないじゃないか!!!書きもしない!!!調査もしない!!!連絡はこっちから以外してこない!!!」
彼女の眉が少し歪んだ。
「おいなんか言えよ!!!俺はお前の担当辞めると決めた!!!もう無理だ!!!そんな太々しい態度!!!社会人やったことあんのか?!!舐めてんだろ!!!」
涙が落ちた。
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