第9話

「そのジーパンと革靴そのままで上だけ変えてよ。ボロボロヨレヨレの赤いロングTシャツダサい。」


どうせ服のセンスねえよ。


「ダサくても乾いたからこれ着てるの。まあ貰っときます。ありがとうございます。」


「今きなさいよ。」


「え?!!」


「あんなおしゃれなところにふさわしくなさすぎ。だから服屋いくって言ったんだから。」


だったらせめてある程度の服装を伝えとけよ!!!!


「一応店員さんに着替える場所とあいてる試着室借りたからそのままあの店行って着替えてきてよ。」


「はいはい、わかりましたよ。払っていただいてますし、そうさせていただきますね...。」


店員もいい迷惑だろ。かわいそうに。


「いらっしゃいませー!お連れ様から伺ってますぅ。試着室こっちなんでぇ。」


ギャル(そろそろ死語?)店員に試着室案内してもらって着替えた。

まぁまぁありなんじゃないか?なんか少し大人に近づいた気分だ。


「ちょー似合ってますよー!!!ではまたお待ちしてますー!!」


お見送りしてもらった。

女の元へ帰るとこちらは見ていない。


「すみませんお待たせして!」


「時間だ、いくぞ。」


と言ってカフェのある方に歩き始めた。


「いやいや、どうっすか、これ。似合ってます??」


俺は横から見せつけるようにジャケットを指差した。

チラッと見てカフェの方へ目線を戻した。


「まあいいんじゃないか?あの女店員にお前の寝顔の写真見せながら決めてもらったからな。」


「はぁ?!いつ撮ったんですか!!!消してくださいよ!!!」


「先月本社行った時の提出物届ける際にお前寝ていたから何かのネタの時に使えるかと思って。」


「...もうしないでください...。俺もう30過ぎのおっさんなんすから、純粋に恥ずかしいと言うかなんと言うか。」


そのまま半地下に進んだ。


「お待ちしておりました。先程は大変失礼いたしました。」


物腰柔らかく、丁寧にグラスを拭いていた。

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