第24話 ポイントスティールの使い方
――エルヴィの身体が金色に光り出す。
〝経験値〟の付与でレベルが一気に上がった証拠だ。
『報告。エルヴィ・ハネミエスはレベルアップ。レベル318になりました。レベルアップにより〔
「新たに
『返答。取得したスキルを全て使えるよう、エルヴィ・ハネミエスの無意識下にフィードバックします』
エルヴィの頭の中に、新たなスキルの情報が激流となって流れ込む。
その数はおそらく100を優に超え、200に迫るほど膨大な量だろう。
「う……あ……? これ、は――!」
「エルヴィ! どうだ、なにかスキルは……!?」
しばし茫然とするエルヴィ。
だが――ゆっくりと、弓を構える。
「……ありがとうございます、シュリオ様。
弓に矢をつがえ、レイスに矢じりの切っ先を向ける。
「魂を食らう亡霊よ……敬虔なる我が弓にて、その身を浄化せしめん」
彼女の姿に、さっきまでの頼りなかった駆け出し冒険者の面影はない。
今のエルヴィは――まるで神話に登場する弓引きのように神々しい。
「この一射を深緑へ捧げ、森神様の御加護で眼前の魔を払いたもう……。〔
――つがえた矢が放たれる。
眩い聖気をまとった矢はレイスへと向けて飛翔し――避ける間もなく奴の霊体へと突き刺さった。
『コオオオオオオオオオオッ!?』
レイスの絶叫が木霊する。
次の瞬間――矢が刺さった箇所から、猛烈な勢いで〝樹〟が生え始めた。
〝樹〟の幹はどんどん太くなり、無数に枝を伸ばしてレイスの全身を包み込む。
さらに枝はスケルトンの群れへと伸びていき、骨の身体を絡め取っていく。
『カチカチ……!?』
『カタ――カタ――ッ!』
何十体もいたスケルトンたちは〝樹〟の奔流――いや成長に飲み込まれ全滅。
そして気が付いた時には――俺たちの目の前には巨大な一本の大木がそびえ立っていた。
「こ……これが、エルヴィの特殊スキル……」
「レイスたちが一瞬で……! な、なんかとんでもねぇモノを見ちまった気分だぜ……」
〝加護〟がもたらす超絶攻撃を目撃し、俺もザッパさんも目を丸くする。
それはもはや、弓矢による攻撃という範疇をあまりにも逸脱してしまっていたからだ。
――唖然とする俺たちを余所に、大木はサラサラと粉状になって消滅していく。
まるでその役割を終えたと言うように。
そして完全に大木が消える頃、地面に紫色をした美しい石がコロンと転がった。
「……? アレは――」
「! おい、ありゃ〝魔石〟じゃねえのか!?」
紫色の石にザッパさんは飛び付く。
それは片手で持てるほどの大きさで、人の頭よりはやや小さいほどのサイズ。
俺はその物体に見覚えはなかったが、〝魔石〟という響きに覚えはあった。
「〝魔石〟って……確かモンスターの体内で精製される、魔力が凝縮された宝石――でしたっけ?」
「ああ、高い魔力を持つモンスターだけが稀に落とすレアアイテムさ。しかしこれほど高密度の〝魔石〟を見るのは初めてだぜ……。おそらく嬢ちゃんの攻撃で、レイスの魔力が一気に凝縮されたんだろう」
「なるほど、これが……。実物は初めて見ました」
「ううむ、これだけの代物があれば……もしかしたらとんでもねえ魔剣を……」
惚れ惚れとした様子で〝魔石〟を眺めるザッパさん。
しかしそれも束の間、
「う……うぅ……」
意識を失っていた行方不明者たちの身体が動き始める。
中でも最初に声を発したのは、ザッパさんの息子さんだった。
「! カーシュ!」
ザッパさんは俺に〝魔石〟を渡すと、急いで息子さんの下へと駆け寄る。
「カーシュ、しっかりしろ!」
「う……お、親父……?」
息子さんは酷く衰弱した様子だったが、まだかろうじて会話はできる状態だった。
どうやら他の人々も似たような感じらしく、すぐに連れ帰れば多くが助かるだろう。
そんな様子を見た俺は、ようやく胸を撫で下ろす。
「ふぅ……一時はどうなることかと思ったが、エルヴィのお陰で助かったよ。ありがとう、エル――」
そう言いながら、俺は彼女の方を見る。
すると――
「――――」
エルヴィは宙を見上げ、未だ茫然としていた。
そして、その小さな口を僅かに動かす。
「はい……はい……わかりました、です、
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