第21話 敵を一掃!

 三人の先頭を、俺は十分に警戒しながら進む。


 通路にトラップがないか、奇襲を受けそうなポイントはないか、全神経を研ぎ澄ませて注意深く地面・壁・天井を観察する。

 パーティにおいては斥候の役割も担当する〔支援職サポーター〕の、まさに面目躍如だな。


 歩きながら【周辺探知ロケーター】を使えれば理想なんだが、生憎あのスキルは移動しながらは使えない。

 もっとも冗談みたいなレベルになったお陰で、明らかに以前より偵察能力が上がっているのが実感できるが。


「エルヴィ、いつでも弓を放てるよう準備しておいてくれ。ただし俺の指示があるまで放たないように」


「はい、です」


 エルヴィにも攻撃の準備をさせ、接敵に備える。


 そして――さっそく前方に〝奴ら〟は湧いた。

 人間と同じく四肢と頭部を持ち、けれど身体には骸骨しかない異形のモンスター。


「スケルトン……! Bランク以上のダンジョンに出現するモンスターじゃないか!」


 俺たちの前に現れたのはスケルトンというモンスターで、多くの中級冒険者たちが苦戦を強いられる厄介な相手だ。


 と言っても、スケルトン一体だけならば大した強さではない。

 Cランク冒険者でもきちんと立ち回れば難なく倒せるだろう。


 コイツが厄介なのは――群生型のモンスターという点。


『カタ……カタ……』


『カチカチ……』


『カタカタ……カチカチ……』


 関節や歯をカタカタカチカチと鳴らすスケルトンは、あっという間に数が増えていく。

 三体――五体――気付けば十体ほどの群れとなった。


 そんなスケルトン共の姿を見て、俺は確信する。

 

「なるほど、コイツらが人を攫ってたんだな……」


 一瞬の隙を突かれて隠し通路に連れ込まれれば、Cランク冒険者くらいでは為す術もないだろう。

 だが――今回はそうはいかない。


『カチカチカチ!』


 錆びた直剣を振り被り、こちらに襲い掛かってくるスケルトンたち。

 俺はポーチに手を突っ込み、爆破玉を掴み取る。


「二人共、耳を塞げ!」


 爆破玉の安全紐を引き抜き――投擲。

 そして爆破玉はスケルトンたちの目の前でボン!と爆発し――数体を木端微塵に吹き飛ばした。


 ――スケルトンは、爆破・衝撃系の攻撃に弱い。

 逆に斬撃や状態異常などへの耐性は比較的高めなため、それを知らないで戦うと消耗は必須。

 こういう知識も俺が経験から得たモノだ。

 もっとも、高いレベルになれば通常の斬撃でも十分通用はするが。


「エルヴィ! 今だ!」


「は、はい、です!」


 エルヴィが弓矢を放ち、一体のスケルトンの頭部を射抜く。

 合わせて俺はナイフを抜き、残ったスケルトンたちへ突っ込んだ。

 そして爆破と爆煙で統率が乱れた奴らを一体、また一体と蹴散らしていく。

 

「俺も加勢するぜ! どりゃあッ!」


 ザッパさんも大槌を振り下ろし、スケルトンを粉砕。


 俺たちは瞬く間にスケルトンの群れを全滅させた。


「へ、骸骨野郎共めが。大したことねえな」


「流石はシュリオ様、楽勝でしたね、です!」


 束の間の勝利を喜ぶエルヴィたち。

 しかし――


「いや……喜ぶのは早いかもしれないぞ」


「え?」


「このスケルトンたち、おそらく下っ端だ。たぶん、コイツらを統率してる奴がいる」


「統率だと? そりゃつまり――!」


「ええ、ボス・・がいるかもしれません」


 スケルトンは群れで行動するモンスターだが、基本的に人を攫う習性はない。

 見つけ次第襲い掛かって、その場で殺害しようとするのが普通だ。


 にもかかわらず、わざわざ隠し通路を使ってまで人を誘拐する理由――。

 おそらくそれは、なんらかの理由で生者を必要とするボスモンスターがスケルトンを操っているからだろう。


 嫌な予感がするが……進まないワケにはいかない。


「この先に、そのボスがいるはず。二人共、覚悟はいいか?」


 俺が尋ねると、エルヴィとザッパさんは真剣な表情でコクリと頷く。


 そして俺たちは、さらに奥へと踏み込んだ。

 隠し通路の最奥は広間になっており、そこには――意識のない大勢の人々がいた。

 その中には、


「――! カーシュ! おい、目を覚ませ!」


 ザッパさんの息子の姿もあった。

 だがすぐさま息子の下へ駆け寄ろうとするザッパさんを、俺は呼び止める。



「ザッパさん、待ってください! ボスが――来ます!」

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