第20話 いざ〈古代の枯坑道〉へ
ありがたいことに、『フロンマー武具店』の店主は自ら〈古代の枯坑道〉の案内役を名乗り出てくれた。
酒場の冒険者たちから地図を買った意味……と思ったが、彼らが紹介してくれたんだから文句はナシにしよう。
そんなワケで、俺たち三人は〈古代の枯坑道〉へとやって来ていた。
〈古代の枯坑道〉は太古の昔に人工的に掘られた場所で、入ってしばらくは一本道が続く。
だがどうにも薄暗く、息苦しさを感じる場所だ。
「つい一週間前さ、素材採取に行った
「そうだったんですね……えっと――」
「ザッパ・フロンマー。ザッパでいい」
「それじゃザッパさん、息子さんはいつも〈古代の枯坑道〉で武具の素材を集めてたってことでいいんですよね」
「ああ、ここは枯坑道なんて呼ばれちゃいるが、奥地に行けばまだいくらか鉱石が掘れるんだ」
ダンジョンを進みながら説明してくれるザッパさん。
途中で雑魚モンスターと遭遇したりもしたが、簡単に蹴散らして奥へと歩いて行く。
やはり出没するモンスターはランク相応、決して強くなどない。
個体によってはエルヴィの弓でも倒せてしまえるほどだ。
コイツらが行方不明事件の原因ってワケじゃなさそうだ。
「
「ザッパさん……」
彼は強面な頑固親父だが、息子のことはとても大事に思っていたらしい。
跡継ぎという理由もあるだろうが、得てしてこういう人は身内を大事にするからな。
不器用ながらも愛情深いお父さんなのだろう。
そんなザッパさんにしばらくついていくと、
「さて……着いたぜ、ここが
分かれ道の前で立ち止まる。
そこは道が三方向へと分かれており、行先が変わるらしい。
エルヴィは気になった様子で、
「この先はどうなっているのですか、です?」
「真ん中と左は俺たちがよく使う採掘場、右がさらに奥へと繋がるダンジョンになってる。少なくとも
なるほど、右の道が
その三本の道を見ていて――俺の〔
たぶん、ここになにかあると。
「二人共、下がっていてくれ」
俺はザッパさんとエルヴィを背後に下げ、
「〔
目を閉じ、地面に手を置いてスキルを発動。
周囲の地形がどうなっているのか、なにかトラップがあるのか、そういった地形情報を取得していく。
すると――
「!」
「シュ、シュリオ様……? なにかわかったのですか、です?」
「ああ……」
俺は三本に分かれた道――ではなく、なにもない壁へと向かって歩く。
そこは一見すると、ただゴツゴツとした岩肌でしかないが――俺がそこへ触れて僅かに魔力を込めると、なんと壁が消失して通路が出来た。
「ッ!? こ、こりゃあ……!」
「偽装トラップの一種だよ。魔力を込めて出現・消失のオンオフができるんだ」
なるほど、これは気付かないはずだ。
これを見抜けるのはよほどレベルが高い〔
もっとも、【
俺みたく使える〔
見つからなかったのも無理からず、って感じか。
「や、やりましたねシュリオ様! これで行方不明者の皆を――!」
「待て、エルヴィ」
新たに現れた通路を進んで行こうとするエルヴィを、俺は呼び止める。
〔
しかも俺が発見するまで誰も気付けなかったということは、まさに未開の領域だ。
どんな危険があるかさえもわからない。
「ここから先は俺一人で行く。エルヴィはザッパさんと一緒にここで待って――」
「イヤ、です!」
かなり食い気味に拒否するエルヴィ。
あ、あれ~?
警戒心丸出しで注意喚起したつもりなんだけどな~?
「あの、エルヴィさん……? たぶん本当に危険だから、キミは――」
「私なら大丈夫、です! 必ずお役に立ちます、ですから!」
「……俺もだ。この先に
ザッパさんは背中に背負った大槌を手に取る。
「俺の本職はあくまで〔
「ザッパさん……」
「シュリオって言ったか。お前さんは大した奴だよ。さっきは怒鳴って悪かった。この先でどんなことがあろうとお前さんを責めたりしないから……行かせてくれ」
その言葉は彼なりの誠意だったのだろう。
そして覚悟をしている目だった。
俺はどこまでも真っ直ぐな二人を拒否できず、
「……わかりました。エルヴィも一緒に行こう。ただし、絶対に俺から離れないこと」
「はい、です!」
「しゃあ、行こうぜ!」
俺たち三人は、未知の通路へと足を踏み出した。
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