第14話 Dランクからやり直せ

「な……な……舐めやがってぇ、クソガキぃ……!」


 ガスは頭から血を流し、憤怒の表情でこちらを睨んでくる。

 彼は剣を構え直し、


「ぶっ殺してやるぞォ! オラアアアアアッ!」


 斬りかかってくる。


 確かにその動きや剣筋はAランク相当、意外とバカにできない。

 だが――俺の敵ではない。


「遅い」


 ガスの鼻面に一発拳をお見舞いする。

 ゴキャっという感触があったから、たぶん折れただろう。

 同時に、


『報告。敵に攻撃がヒット。【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取します』


 天の声が知らせてくれる。


 さらに腹目掛けて、もう一発。


「ぐお……っ!」


『報告。【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』


 その後もガスの攻撃を避けては拳を見舞い、蹴りを入れ、たまに頭突きも入れる。


 もはやレベルが違い過ぎて、ナイフすら必要ない。

 加えて、俺がお見舞いする拳や蹴りは意図的に手を抜いている。

 あまり早くダウンされると、やりづらくなる・・・・・・・からだ。


 さらに俺の攻撃は続き――


『報告。【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』


『報告。【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』


『報告。【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』


『報告。【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取。敵のレベルダウンを確認しました』


 どんどんガスのレベルを下げていく。


 俺は――こんなクソ野郎が、高ランク冒険者として威張っていることが許せない。

 だから、コイツには徹底的にレベルを下げてもらう。

 

「こ、こ、このガキ……! な、舐め、舐めんじゃ……っ!」


 そうしてガスがボロボロで立っているのもやっとになった頃、俺は改めて奴のレベルを見てみる。

 そしてニコっと笑い、


「おめでとう。アンタ、たった今〝レベル1〟に戻ったよ」


「……は……え……?」


「だからさ――またDランクからやり直せ、俺みたいに」


 最後に、ガスの顔面を思い切りぶん殴る。


 派手にぶっ飛ぶガスの巨体。

 そして地面に叩きつけられ、ガスは気絶した。


『報告。敵のレベルは既に最低です。これ以上【経験値奪取ポイントスティール】で〝経験値〟を奪取できません』


 そうかい、そりゃ残念。

 ま、わかっててやったけど。


 戦いを終わらせた俺は、再びエルヴィに近付く。


「エルヴィ、これで終わっ――」


「凄い、です! シュリオ様、格好良すぎます、です!」


 すると、彼女は俺に抱き着いてきた。

 もう怪我なんて痛くない、といった様子で。


「お、おいエルヴィ……!」


「やっぱり、シュリオ様は私のヒーロー、です! また命を救われちゃった、です!」


「いや、俺は売られた喧嘩を買っただけでだな……。と、とりあえず離れてくれないか……?」


 いきなり女の子に抱き着かれると、流石に恥ずかしくなるな……。


 もっとも子供の頃は、よくこうやって抱き着いてくる妹みたいな子・・・・・・もいたけど……。


 エルヴィは比較的背も低いから、余計に既視感があるんだよなぁ……。

 そんな昔のことを思い出しながら、俺は彼女を離す。


 その後、俺たちは無事ダンジョンの最奥から治癒草を採取。

 ドロテアさんの下へと戻り、試験は終了となった。


 無論、途中でガスたちの妨害があった旨は全て伝えて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る