支援職の俺だけ使える【ポイントスティール(経験値奪取)】 ～追放されたら味方に付与していた経験値がカムバックしてきた件～

第3話 覚醒

「え？」

　突如どこからともなく聞こえてきた声に、俺は驚かされる。

　それは初めて聞いた声で、まるで頭に中に響くようだった。

　さらに次の瞬間――

「な……!?　これは……!?」

　俺の身体が金色に光り出し、同時に凄まじい力が湧き上がってくる。

『レベルが一定値を超えました。【経験値奪取（ポイントスティール）】がランクアップ、派生スキル【カムバック】を取得します』

『報告。【カムバック】により仲間に付与していた〝経験値〟がスキル使用者に返還されます』

『報告。レベルアップにより〔支援職（サポーター）〕のスキルが新たに解除（アンロック）されます』

　――次々と脳内に響く説明。

　俺は流石に困惑を隠せず、

「ま、待て待て！　一体なにがどうなってんだ!?」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】のランクアップにより【カムバック】を解除（アンロック）。『白金の刃』から脱退したため、仲間に付与していた〝経験値〟が返還されました』

　なんとも丁寧に答えてくれる頭の中の声。

　俺はしばし目をぱちくりさせ、

「……えっと、俺の質問に答えてくれるのか？」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】に関することであればお答えできます』

「その、アンタはなんなんだ？」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】の説明です』

「……それって、つまり？」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】の説明です』

　そうかそうか、キミは〝【経験値奪取（ポイントスティール）】の説明です〟なんだな。

　なんだかわかったような、わからないような……。

　面倒くさいから、これから天の声とでも呼ぶようにするか……。

　ともかく、【経験値奪取（ポイントスティール）】に関する情報を与えてくれるらしい。

　俺のスキルにこんなぶっ飛んだ能力があるなんて、知らなかったぞ。

「う～ん……どこから聞いたものか……。そもそもアンタの声を初めて聞いたけど、どうして今まで喋ってくれなかったんだ？」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】のレベルが一定値を超えなかったためです』

「そのレベルを超えた今なら、色々教えてくれると」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】に関することであればお答えできます』

「それじゃさっき仲間の〝経験値〟が返還されたって言ってたが、それはゲイツたちの〝経験値〟を取り戻して俺がレベルアップしたってことでいいんだよな？」

『返答。その通りです』

「ふむ……レベルが上がったってことは、〔支援職（サポーター）〕のスキルも色々増えたってことだよな。どれくらい解除（アンロック）された？」

『返答。67個の〔支援職（サポーター）〕スキルが解除（アンロック）されました』

　……ん？　67個？　〔支援職（サポーター）〕のスキルだけで？

　いくらなんでも多すぎやしないか……？

　いや、まさか……。

「な、なあ、今の俺のレベルってどれくらいだ……？」

『返答。シュリオ・グレンは現在レベル312となります』

「ぶふぉ!?」

　思わず吹き出してしまった。

　ヤバいな、レベル312の〔支援職（サポーター）〕なんて見たことも聞いたこともない。

　バリバリ戦闘職なＳランク冒険者だってレベル99を超えることは滅多にないんだから、〔支援職（サポーター）〕なんて言わずもがなだ。

　たぶん現状において、世界最高レベルの〔支援職（サポーター）〕って俺になるんだろう。

　でもまあそうか、これまで三年かけて『白金の刃』の全員に振り分けた〝経験値〟が全部戻ってきたんだから、それくらいになるよな。

　俺はてっきり、仲間に付与した〝経験値〟は永続的なものになると思っていたから、これは嬉しい誤算というべきか。

　ただそれって……。

「……ちなみに、今のゲイツたちのレベルってどうなってる？」

『返答。【経験値奪取（ポイントスティール）】で〝経験値〟が付与されていない状態にまで下がっています』

　……それって全員30～40、下手すりゃ50レベルくらい下がってる可能性あるぞ。

　なんかもう、このあとアイツらがどうなるか容易に想像つくな……。

「……でも自業自得だ。アイツらが俺を裏切って捨てたんだからな」

　俺を崖から突き落としたかつての仲間たちの顔を思い浮かべ、俺はギュッと拳を握る。

　『白金の刃』がこれからどうなるかなんて、もう俺には関係ない。

『質問。新たに獲得したスキル、全て詳細をお聞きになりますか？』

「……いや、いい。とりあえず使える状態ならそれで」

　67個分の新スキルの説明なんて、一々聞いてられないからな。

　今度鑑定士にステータス表を描いてもらった時にでも見ればいいや……。

　そう思っての発言だったが、

『返答。それでは取得したスキルを全て使えるよう、無意識下にフィードバックします』

　天の声がそう言うと――頭の中に様々な情報が流れ込んでくる。

　その瞬間、俺は色々なスキルが使えるようになったと感覚で理解した。

「これ、は……。なるほど、こういうことか」

　さっそく俺は取得したスキルを使ってみることにする。

　今の状況なら、これが便利か。

　まずはこれまで光源となってくれていたマッチの火を消し――

「〔支援職（サポーター）〕スキル――【暗視眼（ナイト・ビジョン）】」

　これは暗闇でも周囲をハッキリと視認できるようになるスキルらしい。

　これがあれば暗闇でも探索が捗るし、もし味方がいれば指示出しも容易になるだろう。

　なるほど、これは便利だな。

　さっきあれだけ暗かった洞穴が、まるで昼間みたいにハッキリと見える。

「ありがとよ。これからもなにか【経験値奪取（ポイントスティール）】の疑問があれば質問するから、よろしくな」

『返答。こちらこそよろしくお願いします』

　律儀に返してくれる天の声。

　さて、なんかもうなんでもできる気になってきたし、まずはこの洞穴から脱出を――

「――――い、いやぁ！　誰か助けてええええぇぇぇッ！」