第3話 幽霊船
5月が終わりジメジメと雨が降り続き蒸し暑さを物語る6月の梅雨時。烏間心霊探偵事務所では……
「中々、洗濯物が乾かなねぇな。」
「蒸し暑いぞ悠希。」
「んなこと言われてもなぁ。」
斑は猫の姿でグデーンと伸びた状態で床に寝転がってる。
「それにしても日本は四季があるから良いとか言うが実際には身体が馴れるまで大変じゃ。」
「まぁそこは仕方がねぇよ。ってか洗濯物を干すの手伝えよ。」
「暑くて暑くてやる気が出ない。」
「はぁ…」
俺は部屋干しで洗濯物をハンガーやらで色々と干していく。
「そもそも。日本の湿気が嫌いなんじゃ。あの肌にまとわりつく湿気が!」
「はいはい。洗濯物を干したら少し軽くクーラー掛けてやるよ。」
「うむ。頼む。」
あぁ…今月は電気代が少し高く付きそうだ。クーラーが1番電気代が高いんだぜ?
俺は洗濯物を全て部屋干しにしてからクーラーのリモコンに電源を入れる。あんまり設定温度は下げ過ぎず扇風機も活用してな。
「ふぃ~…生き返る。やはりクーラーは良いのぉ。」
「良いねぇ。お前は金を払わないから呑気で。」
取り敢えず除霊の依頼は来て居ないからパソコンを開いて副業を始める。
決してインターネットでエッチな動画を見ている訳ではないからな。
そう思った奴は正直に手を上げろ。今なら3/4殺しで勘弁してやる。
因みに副業って言うのは小説家としての俺だ。何を書いているのかと言われるとだな……
俺の除霊師の依頼の体験談を元にライトノベル風に主人公が除霊して行く話。主人公のモデルは俺だし、相方も斑。名前と地名は変えているし。多少の脚色も付け加えている。
知り合いの編集者に提案されたのがキッカケで試しに書いてみたら他の編集者やソイツの上司にも気に入られたみたいだから副業として書いている。
出版してからは地味な人気で安定の中堅的なポジションみたいだ。
副業でざっと20万って所だな。心霊やオカルトのファンから地味な人気だとか。一応ペンネームでやってる『初花 定祐(はつばな じょうすけ)』というペンネームでな。
俺はパソコンの画面に向けて過去の依頼書から抜粋してストーリーを組み立てて、ゲイと書いたマル秘帳で除霊日記として書き込んだ脚本と脚色をしてパソコンのキーを打ち込む。
出版のペースは月始めで出していて1冊について除霊の4件を元に引き延ばしに引き延ばして1件50ページで書いて1冊200ページにちょいちょい目次やら作者の後書きをこみこみ。
こうやって除霊の依頼が来ないときはパソコンを見つめながら、依頼書とゲイと書いたマル秘帳を見ながらネタを漁ってネタを見付けたらパソコンのキーを打ち込む。
先月が2件だったからな。今月はさて何件の除霊の依頼が来るのやら……
俺は冷蔵庫にあるアイスコーヒーの無糖を氷を入れたコップに注ぎ、パソコンに戻りアイスコーヒーを1口。
斑は猫の姿で涼しげな顔をしながら夢の中。俺は副業の小説を更新。今、俺が聞こえるのはパソコンのキーボードを打ち込む音だけ。
取り敢えず1ページを書き上げUSBの中へ保存してから煙草を1本だけ取り出して口にくわえて火を着ける。
「ふぅ~…今日の夕飯は何にするか。冷蔵庫の中を覗いてみるか。」
俺は立ち上がり冷蔵庫へと足を運ぶ。どれどれ…鶏肉を発見。そしてキャベツ。あと缶詰のトマト。
ん~…今日はトマトベースのロールキャベツにするか。鶏肉はミキサーで細かくしてな。
今夜の夕飯が決まったから、まだ早い時間かもしれないけど夕飯の仕込みでもしようと考えていた時だ。
リビングから電話が鳴り出した。どうせセールスの電話だろうと無視しようと思ったが除霊の依頼かもしれないから一応だけど電話に出る。
「はい。こちら烏間心霊探偵事務所です。」
俺は受話器を耳に当てて営業スマイルではなく営業ヴォイスで受ける。
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