第2話 思い出の物は取り憑く

俺は人形達を振りほどこうとするが全くってほどに人形達は俺から離れようとしないし、身動きも上手く出来ない。


「面倒くせぇ……って!」


俺は霊清銃を取り出して人形に純銀の弾丸を撃ち込もうとしたがバランスを崩れて、その場で倒れこんでしまう。


「ちきしょう……早く行かないと……」


倒れこんだ拍子に霊清銃も遠くに落としてしまい身動きが取れずに、俺はただ人形達にしがみ付かれ拘束されている。


俺は何とか動かせる両腕を動かしてスボンのポケットにある霊縛(れいばく)の数珠を取り出して、ぎこちない動きで両手の手のひらを合わせる。


「霊魔獣禁呪(れいまじゅうきんじゅ)…霊縛鎖(れいばくさ)ッ!」


そして唱えた瞬間に数珠の玉から幾つもの鎖を出して俺にしがみ付く人形達全員を縛り付ける。


「ったく。手間を掛けさせんなよ。」


俺は霊清銃を拾って駆け足で泰代さんの寝室に向かう。


俺は玄関に入ると玄関前に泰代さんと幸吉さん。そして斑が居た。


「ずいぶんと遅いじゃないか!」


「すまん!少し足止めをくらった!!」


「嫌……嫌よ……」


「本当に……人形が……」


幸吉さんと泰代さんは言葉を失い身体を全身カタカタと小刻みに震えている。


『ステルナ…ワダジノ……ワダジノ…人形ォォォオオオッ!!』


「ったく…うるせぇ。」


『グギャァァァアアアッ!!痛イ!!焼ケルッ!!』


俺は霊清銃の引き金を引いて純銀の弾丸を人形の目ん玉にブチ込むと、人形は倒れて頭だけが吹き飛び断末魔の叫びの様に奇声をあげる。


『許さない…許さない…許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないィィィイイイッ!!!』


そして人形から半透明な幽霊が現れると片目を無くした血眼になった遺影と心霊写真で確認した幸吉さんのお母様だ。


「か、母さん!!」


幸吉さんにはどうやら自分のお母様が見えているみたいだ。



『人形…ステルナ……人形ステル奴…ユルサナイ……』


すると幸吉さんのお母様は泰代さんに向かって襲い掛かろうとしてくる。泰代さんは涙を流しながら震えて、恐怖で腰を抜かして動けない。


「ちっ!!」


『アガァァァァッ!!ウッ…マタ…マタ…イタイ…』


俺は再び幸吉さんのお母様の幽霊に躊躇なく、軽く悪態を付きながら舌打ちをして霊清銃の純銀の弾丸を撃ち込む。


そして幽霊が怯んでいる隙に霊縛(れいばく)の数珠を取り出して両手の手のひらを合わせて唱える。


「霊魔獣禁呪(れいまじゅうきんじゅ)…霊縛鎖(れいばくさ)ッ!」


そして唱えた瞬間に数珠の玉から幾つもの鎖を出して幽霊を拘束して身動きを取れない様にする。


『ウッ!ハナセ…ハナセッ!!』


「それは出来ない頼みだ。なんで泰代さんを苦しめる?」


『この…この女は私の大事な人形を…それだけじゃない。大事な1人息子を…』


「母さん…」


どうやら生前から幸吉さんのお母様は泰代さんをかなり嫌っていたみたいだ。


「たがらって死んでも泰代さんを苦しめる所か夫婦の夢まで邪魔するのか?」


『私は…私は!あの人形が大事なんだよ!私の思い出が詰まった大事な人形なんだ!なのに…』


「それで泰代さんを苦しめて大事な1人息子の幸吉さんまでも苦しめて大事な人形なのか?」


『……』


「もし。もしだ。人形を捨てなかったらアンタは成仏してくれるのか?」


『もちろん。あの女が約束事を守るわけがない。』


「なら俺が約束する。俺がアンタの大事な大事な宝物の人形を引き取る。引き取って大事に飾ってやるよ。」


『本当に……か……?』


「あぁ。約束する。だから、もう成仏して、この夫婦の幸せを見守ってやれよ。」


『そうか……なら…思い残す事は…何も……』


そして幸吉さんのお母様は安らかな表情で散り散りの光になり消えていった。

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