第2話 思い出の物は取り憑く


カーナビを頼りに車を走らせること数時間。俺はなんとか依頼者の飯田幸吉さん宅に着いて駐車場に車を置いて俺と斑は車を降りる。


どうやら出迎えは居ない様だから玄関にあるインターホンを押す。


アレ?鳴らないぞ。インターホンがブッ壊れて修理しないでそのまんまかよ。


仕方ない。原始的な方法でやるしかないか。


「ごめんくださーい。飯田さーん。私、烏間ですー!」


「はーい。烏間さん。ようこそ。」


「うわっ……後ろに居ましたか…」


「あぁ。驚かせて申し訳ございません。私が依頼主の飯田幸吉です」


俺は不意を突かれた様に後ろから声を掛けられ驚かされたのが、依頼主の飯田幸吉さん。どうやら畑仕事をしていた様だ。


「いえいえ。私が烏間心霊探偵事務所の烏間悠希と彼女は助手の斑です。」


「私が斑でございます。宜しくお願いします。飯田さん。」


「こちらこそ。宜しくお願いします。」


俺と斑。そして依頼主の幸吉さんに改めて自己紹介をした所で本題に入る。


「幸吉さん。奥様は今は何処に?」


「えぇ…妻は今は少し気が滅入ってしまっていて家の中で養生しています。」


「あの。もし宜しければ、奥様と少しお話したいのですが良いですか?」


「はい。では、こんな所で話すのもアレですから、どうぞ家の中に入って下さい。」


「有り難うございます。」


俺と斑は幸吉さんに言われるがままに玄関の中に入り、靴を脱いで幸吉さんの奥さんの寝室に案内される。


へぇ…ここの家は純和風だな。どの部屋も畳みで扉は襖で居間の方は囲炉裏があるじゃねぇか。


それに……この家の外からはあんまり感じなかったけど家の中に入ると同時に感じたな。


幽霊の気がな。そこまで禍々しい物や殺気を感じないけどアレだな。


心残りや未練の感触が強いな。幽霊は依頼の手紙からしで人形゙ってのがキーワードだな。


階段を上ると幸吉さんは襖を開ける。どうやら幸吉さんの奥さんの寝室だな。


「泰代(やすよ)。この人は烏間心霊探偵事務所の烏間さんだよ。」


「初めまして飯田泰代と言います。」


「除霊師の烏間悠希です。幾つか質問を良いですか?」


「はい。」


幸吉さんの奥さん泰代さんは布団から上半身だけを気だるそうに起き上がり淡々と返事をする。


泰代さんは恐らく幽霊の恐怖で顔はヤツレテ、目の下には大きなクマがあって顔色の血色も良くない。


だけど俺からは幽霊の気は感じられない。たぶん斑からも幽霊の気は感じられないと思う。


「奥様はずっとここで半分寝たきりですか?」


「はい…あの人形が出てからは精神的に物凄く体調が悪く…」


「お食事はどうしています?」


「全く食欲もありません…食べても、その直後にトイレに戻してしまいます…」


「そうですか…」


あんまり状態は良くないな。取り憑かれてる様子は無いけど奥さんの言ゔ人形゙が奥さんの一種のトラウマになってるのか…


「それに…烏間さん。」


「何でしょうか?泰代さん。」


「あと睡眠も充分に取れなくて?」


「どうしてですか?」


「夢に……夢にあの人形が私の前に現れて、追い掛けてくる夢を見ているのです。」


「その人形って言うのが泰代さんの前に現れてから?」


「はい…毎日の様に私の夢に出てきては延々と…」


「それは、恐らく幽霊による一種の暗示に近いですね。」


「はい…まるで呪われている様で…」


「なるほど。」


「だから悪夢を見ないように起きていても、またいつ私の前に人形が現れると怯えて…」


「寝ていれば必ず人形が悪夢として現れる訳ですか…」


「はい…」


これは予想以上に厄介だな。まず泰代さんはきっと繊細な神経の人で余計に神経質になってる。


「ところで泰代さんは人形って何回ほど見ました?」

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